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【プラスチック条約交渉】迫る期限、遅い進展 海外は意欲的、腰重い日本

 プラスチック汚染に対処する国際条約作りの協議が遅れている。今年終盤に設定された交渉期限に間に合わないとの観測から、延長論もささやかれ始めた。海外では条約制定を待たずに意欲的な対策に着手する動きも。日本の腰の重さが目立っている。

イタリア・ナポリの海岸に打ち上げられたプラスチックごみ=2022年11月(ゲッティ=共同)
イタリア・ナポリの海岸に打ち上げられたプラスチックごみ=2022年11月(ゲッティ=共同)
プラスチックなどがたまった米カリフォルニア州の河口付近でごみの破片をくわえるカモメ=2022年12月(ゲッティ=共同)
プラスチックなどがたまった米カリフォルニア州の河口付近でごみの破片をくわえるカモメ=2022年12月(ゲッティ=共同)
インドネシア沖で漁網に絡まったタイマイ。海に投棄された漁網などのプラスチック製漁具は、長期にわたり生物を脅かす=2022年6月(ゲッティ=共同)
インドネシア沖で漁網に絡まったタイマイ。海に投棄された漁網などのプラスチック製漁具は、長期にわたり生物を脅かす=2022年6月(ゲッティ=共同)
プラスチック条約制定の政府間交渉委員会の動き
プラスチック条約制定の政府間交渉委員会の動き
イタリア・ナポリの海岸に打ち上げられたプラスチックごみ=2022年11月(ゲッティ=共同)
プラスチックなどがたまった米カリフォルニア州の河口付近でごみの破片をくわえるカモメ=2022年12月(ゲッティ=共同)
インドネシア沖で漁網に絡まったタイマイ。海に投棄された漁網などのプラスチック製漁具は、長期にわたり生物を脅かす=2022年6月(ゲッティ=共同)
プラスチック条約制定の政府間交渉委員会の動き

 ▽不満噴出
 プラスチック製品は暮らしの隅々に浸透し、ごみは増え続けている。経済協力開発機構(OECD)の予測では、取り組みを強化しなければ2060年の世界のプラごみ発生量は19年の3倍近い約10億トンに、海や川、湖などに堆積する量も3・5倍の約5億トンに膨らむ。「プラスチック汚染は時限爆弾」(フランスのマクロン大統領)などと、手遅れになる前に対処を求める声が強まる。
 条約の協議は、具体的な条文の交渉を昨年11月の第3回政府間交渉委員会で始める構想だった。それが来月の第4回会合に持ち越された。示された条約原案に「自国の意見が含まれていない」と不満が噴出したためだ。
 各国の主張を取り入れた結果、原案は当初の約30ページから70ページに拡大。交渉期限は11~12月の第5回会合で、妥結への不安が漂い始めている。今月1日、国連環境総会は年内決着に向け「積極的に取り組む」との閣僚宣言をまとめたが、日本政府関係者は「来年に2回の会合を追加する話が出ている」と明かす。
 ▽汚染者負担
 交渉の進展を待たず、意欲的な取り組みに乗り出す例もある。
 欧州連合(EU)は今年1月、加盟各国の下水処理施設で微小なマイクロプラスチックの監視を始めることで暫定合意した。「汚染者負担」の原則を導入し、汚染物質の除去費用の一部を生産者に負わせる方針も掲げた。特に汚染度合いの高い医薬品と化粧品産業には、微細な汚染物質の除去費用の少なくとも8割の負担を義務付ける。
 大西洋に面するナイジェリアのラゴス州も1月、使い捨てプラスチックや発泡スチロールの使用と配布の即時禁止を発表した。州政府は「海に面する都市として環境が汚され続けることは見過ごせない」とする。
 環境団体グリーンピースは、実効性に課題があるものの、アフリカの少なくとも34カ国がプラスチックの使用を制限していると指摘する。
 ▽企業連合
 日本の対応はこうした動きと温度差がある。
 昨年札幌市で開いた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で日本は、議長国として「プラごみの新たな汚染を40年にゼロにする」との合意をまとめた。だが、その後は目立った国内対策を打ち出していない。環境省の担当者は「条約が策定されたら、内容を参考にして日本に合った意欲的な対策を立てたい」と様子見の構えだ。
 政府とは対照的に、日本コカ・コーラなど対策に意欲的な国内10社は昨年11月に企業連合を結成した。次の交渉委会合に向け、野心的なルール作りを政府に求める声明を公表する予定だ。
 世界自然保護基金(WWF)ジャパンの三沢行弘さんは、日本政府は世界共通の野心的な規制導入に消極的だと指摘。「条約の交渉では、あくまでも意欲的な内容にすることに注力すべきだ」と訴える。

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