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【特定技能】「維持できぬ」業界悲鳴 公共交通、安全に懸念も

 即戦力として外国人労働者を受け入れる特定技能1号の対象に、自動車運送業や鉄道など4分野を追加する政府方針が18日、自民党の合同会議で了承された。担い手の確保はインフラ部門でも喫緊の課題。「このままでは事業を維持できない」と、業界からは悲鳴が上がる。人手不足が深刻化する「2024年問題」も懸念される中、議論では、政府方針に理解を示す一方で「安全性は十分なのか」と懸念の声も聞かれた。

自民党本部で開かれた、外国人労働者の受け入れに関する合同会議=18日午後、東京・永田町
自民党本部で開かれた、外国人労働者の受け入れに関する合同会議=18日午後、東京・永田町

 「大変期待している」。日本バス協会は政府方針を歓迎する。2月上旬の自民党国土交通部会では「賃上げや採用強化などの努力を続けても、日本人のみで必要な運転手を確保するのが難しい」と苦境を訴えていた。協会は2024年度に2万1千人、30年度に3万6千人の運転手が不足すると推計。手だてを打たなければさらなる減便や路線廃止につながり、「地域の足」を維持できないとの危機感は強い。
 鉄道も特定技能の対象に追加される。あるJR幹部は、技術系の若手採用が伸び悩んでいると明かし「業界全体が、将来的に日本人だけでは立ちゆかなくなると感じている。前向きな話だ」と期待を込める。
 運転士や車掌などの運輸係員の業務も含まれ、幹部は「事故や災害の際は乗客の安全を瞬時に考え、指令所とやりとりしなければならない。専門用語が多く外国人には難しい可能性が高い。マニュアル整備などしっかりと準備を進める必要がある」と見据えた。
 これまでの議論では議員から、交通事情が異なる外国人の受け入れを危ぶむ意見も相次いだ。事故や急病人の発生、乗客トラブルに対応できるのか―。自動車運送業に関し政府は、母国でも運転業務に就き、一定のスキルを持つ外国人労働者を想定する。業界に研修の充実を求めた上で、利用者と接する機会が多いバスやタクシー運転手、また鉄道の運輸係員には、他の業種より高い日本語能力試験「N3」レベルを要件とした。
 国交省幹部は「命に関わる仕事。乗客が不安を覚えないようにしなければいけない」と気を引き締める。
 18日の合同会議後、自民党の外国人労働者等特別委員会の笹川博義事務局長は「日本人運転手でも事故はあるが、外国人の場合は社会的により重く取られかねない。各業界は慎重に運用してほしい」とくぎを刺した。

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