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【中国外交戦略】トランプ氏迎撃へ足場固め 新興国台頭乗じ攻勢

 中国は米大統領選でトランプ前大統領が返り咲き対立が激化する事態に備え、迎え撃つ態勢の整備を急いでいる。ロシアと事実上の準同盟関係を維持しつつ、欧州にも接近。習近平指導部は「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の台頭を、国際秩序の勢力図が変化する「戦略的機会」と捉え、外交攻勢を強める構えだ。

中国全人代に合わせて記者会見する王毅外相=7日、北京(共同)
中国全人代に合わせて記者会見する王毅外相=7日、北京(共同)
ドイツのショルツ首相(右)と写真撮影に臨む中国の王毅外相=2月、ドイツ南部ミュンヘン(AP=共同)
ドイツのショルツ首相(右)と写真撮影に臨む中国の王毅外相=2月、ドイツ南部ミュンヘン(AP=共同)
中国の外交戦略(写真はゲッティなど)
中国の外交戦略(写真はゲッティなど)
中国全人代に合わせて記者会見する王毅外相=7日、北京(共同)
ドイツのショルツ首相(右)と写真撮影に臨む中国の王毅外相=2月、ドイツ南部ミュンヘン(AP=共同)
中国の外交戦略(写真はゲッティなど)

 ▽混乱警戒
 「米中2大国が衝突すれば、その結末は想像を絶する」。王毅外相は7日の記者会見で、対中強硬姿勢を鮮明にしているトランプ氏らをけん制した。
 米中首脳は昨年11月の会談で関係安定化の方針で一致した。だが今年1月の台湾総統選後に米代表団が訪台すると中国は「内政干渉」と反発。米国による半導体の対中輸出規制にも繰り返し懸念を表明し、対立の火種はくすぶったままだ。
 トランプ氏は政権を奪取すれば中国からの輸入品に高関税を課す可能性を示唆。トランプ前政権下で米中は激しい貿易戦争を経験しており、中国は両国関係が再び大混乱に陥ることを警戒する。
 ▽自信
 王氏は7日の記者会見で「少数の大国が国際業務を独占する」時代は去り、世界は多極化に向かっていると力説。その上で中国外交が「さらに力を発揮する新たな局面」に入ったと自信を見せた。
 中国は対米共闘で一致するロシアと、ウクライナ侵攻後もエネルギー分野を柱に貿易を拡大。一方、王氏は2月にドイツとスペイン、フランスを歴訪し、欧州にも秋波を送る。
 中ロを含む主要新興国でつくる「BRICS」には、中国が関係正常化合意を仲介したイランとサウジアラビアの新規加盟が決まった。中東でパレスチナ自治区ガザの戦闘が激化する中、中国はアラブ諸国に寄り添い、米イスラエル陣営を揺さぶる。
 ▽大国外交
 習指導部は昨年12月、外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」を約5年半ぶりに開き「世界の大多数を団結して勝ち取る」方針を確認した。米欧主導の国際秩序に不満を抱く新興国の代弁者としての立ち位置を確保する戦略とみられる。「グローバルサウスはもはや『沈黙の大多数』ではない」(王氏)。
 ただ中国では昨年、秦剛前外相が就任約半年で動静不明となり、何の説明もなく解任された。共産党政治局員の王氏の再起用は異例で、一時的とみられていたが、後任の発表はない。外交筋の間では「当面、王氏が続投するかもしれない」とのうわさが飛び交う。野心的な大国外交を担う人材が不足しているとの指摘もある。(北京共同=花田仁美、杉田正史)

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