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【欧州のウクライナ支援】主導権争い、揺れる仏独 EUの両輪、連帯に赤信号

 ウクライナへの軍事支援を巡り、フランスとドイツの関係が急速に悪化している。最大の支援国である米国の関与継続が不安視される中、新たに主導権を握るための両国の争いが激化。欧州連合(EU)の両輪である仏独の関係がぎくしゃくすれば欧州の連帯に赤信号がともり、支援に決定的な影響が出かねない。

ウクライナ支援会合出席のためフランス大統領府に到着したドイツのショルツ首相(中央左)と、迎えたマクロン大統領=2月、パリ(ロイター=共同)
ウクライナ支援会合出席のためフランス大統領府に到着したドイツのショルツ首相(中央左)と、迎えたマクロン大統領=2月、パリ(ロイター=共同)
ドイツ・ベルリンの首相府でフランスのマクロン大統領(左)を迎えるショルツ首相=1月(ロイター=共同)
ドイツ・ベルリンの首相府でフランスのマクロン大統領(左)を迎えるショルツ首相=1月(ロイター=共同)
フランスとドイツの主な対立点(写真はロイター)
フランスとドイツの主な対立点(写真はロイター)
ウクライナ支援会合出席のためフランス大統領府に到着したドイツのショルツ首相(中央左)と、迎えたマクロン大統領=2月、パリ(ロイター=共同)
ドイツ・ベルリンの首相府でフランスのマクロン大統領(左)を迎えるショルツ首相=1月(ロイター=共同)
フランスとドイツの主な対立点(写真はロイター)

 ▽皮肉
 「ウクライナへの地上部隊派遣を排除しない」。2月下旬、火を付けたのはフランスのマクロン大統領のこの発言だった。パリで国際会議を開き、今後の支援策を主導したいとの考えを鮮明にした。本格戦争を招くとしてタブーだった部隊派遣の可能性にも踏み込み、慎重姿勢のドイツなど各国が猛反発した。
 さらにマクロン氏は「部隊派遣を拒む人は戦車を拒んだ人と同じだ」と語った。ドイツのショルツ首相は昨年に方針転換するまで自国製レオパルト2戦車のウクライナ供与を拒否。発言はショルツ氏への皮肉とみられ、ドイツはいら立った。
 マクロン氏は開戦当初、ロシアとの対立回避を模索したが、最近は公然と非難するなどタカ派姿勢を強める。米国の指導力が揺らぐ中、ロシアに強硬なバルト諸国などの支持を得て、持論とする欧州独自防衛の強化につなげたい思惑も透ける。
 一方、ショルツ氏はウクライナが求める長射程の巡航ミサイル「タウルス」の供与を拒み続ける。ドイツが戦争に巻き込まれる危険が高まるとの理由だが、マクロン氏の不信感は高まっている。
 ▽ロシア打倒
 「幼稚な口論」「エゴのぶつかり合い」。ドイツではショルツ、マクロン両氏への批判が目立つ。仏独は歴代首脳が非公式の懇談を重ね、微妙なバランスを保ってきた。ドイツメディアは現在の関係を「これまでになく険悪だ」と指摘する。
 ドイツのキール世界経済研究所によると、フランスのウクライナへの支援額は開戦から約2年間で18億ユーロ(約2900億円)。国内総生産(GDP)比で見ると、ドイツの0・6%に対してわずか0・1%程度だ。
 ショルツ氏は自国の軍事支援が米国に次ぐ「世界2位」と繰り返す。ドイツが欧州のウクライナ支援を主導してきたと胸を張り、フランスを念頭に「欧州の他の政府もドイツのようにもっと支援すべき」と訴える。
 ショルツ、マクロン両氏は15日にベルリンで会談。結束を演出する狙いだが、溝は深い。
 米国の支援が不透明な中、欧州の連帯はウクライナの勝利にとって絶対条件だ。フランスの政治学者アレクサンドラ・デフープシェファー氏はフランス紙ルモンドに「安全保障に不可欠なロシア打倒に尽力するため、欧州は仏独の対立を乗り越えなければいけない」と警告した。(パリ、ベルリン共同=田中寛、斉藤範子)

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