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【国内スポーツ賭博】日本では合法化議論停滞 賭け、収益拡大で推進論も

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の通訳だった水原一平氏が違法賭博関与の疑いで事実上解雇されたことで、スポーツの試合結果や内容を予想してお金を賭ける「ベッティング(賭け)」に焦点が当たっている。世界的な市場拡大を受け、日本でも合法化の議論が一時進展した。ギャンブル依存や八百長への懸念もあり、現在は停滞中だが、スポーツ界の収益拡大と不法行為防止の観点から推進論もある。

Jリーグが始まった1993年の開幕戦と同じカードとなった東京V―横浜M戦で、プレーする両チームの選手たち=2月、国立競技場
Jリーグが始まった1993年の開幕戦と同じカードとなった東京V―横浜M戦で、プレーする両チームの選手たち=2月、国立競技場
スポーツ振興くじとベッティングの対比
スポーツ振興くじとベッティングの対比
Jリーグが始まった1993年の開幕戦と同じカードとなった東京V―横浜M戦で、プレーする両チームの選手たち=2月、国立競技場
スポーツ振興くじとベッティングの対比

 ▽解禁にくぎ
 昨年12月、スポーツ産業の活性化を図る「スポーツエコシステム推進協議会」の会合。民間企業約100社と競技団体などが集まった場で、読売新聞グループ本社の山口寿一社長の発言が注目を集めた。「安易にベッティングに走らず、スポーツくじの活用などで成長させたい」。プロ野球巨人のオーナーでスポーツ界に影響力のある同社長がベッティング解禁にくぎを刺した形。耳を傾けた関係者は「当分動くことはない」とにらんだ。
 国内で認められているのは、特別法が設けられている競馬などの公営ギャンブルと、サッカーとバスケットボールのスポーツ振興くじ。ベッティングは現状、刑法の賭博罪に該当する。一方、高いギャンブル性やオンライン化を背景に、海外では人気が拡大。野球のある1イニングの得点を予想するなど賭け方が多様で、配当も大きい。
 協議会によれば、日本の各競技も海外から賭けられており、サッカーやバレーボールなどの下部リーグまで対象になっている。試算では、日本向けの賭け金は年間5兆~6兆円に上り、協議会は「海外に流れる大きな逸失利益だ」としている。
 ▽桁違い
 東京五輪・パラリンピックを終えたスポーツ界は、財源確保が大きな課題となっている。スポーツ庁予算は近年300億円台で推移し、振興くじによる施設や選手などへの助成も年間200億円程度。ベッティングでうごめく額は桁違いだ。
 推進派は新たな収益源として期待するとともに、合法化が違法賭博や八百長の対策にもなると訴える。協議会の会合では、ベッティングを導入している米プロバスケットボールNBAの幹部が登壇し「違法業者による無法地帯だったが、リーグで管理し、可視化することでインテグリティー(高潔性)を守れる」と強調した。
 水原氏が告白したとされる依存症の問題など、課題は山積している。公営ギャンブルは自治体への財政面の貢献など社会還元を掲げることで認められている。賭博罪に詳しい東京大の橋爪隆教授(刑法)は「逸失利益の回収だけでは解禁の理由にならない。世間を納得させる目的や理念が必要だ」と指摘した。

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