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【24年度予算成立】裏金足かせ、もがく首相 野党攻撃、険しい浮揚

 岸田文雄首相が2024年度予算成立にこぎつけた。持ち直した経済と4月前半の訪米もてこに、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で失墜した政治の信頼回復を目指す。しかし肝心の裏金の実態解明は道半ばで、野党は攻撃続行を宣言する。「政治とカネ」が足かせとなり、もがき続ける首相。命運が懸かる衆院3補欠選挙が1カ月後に迫る中、政権浮揚の道はなお険しい。

2024年度予算が与党などの賛成多数で可決、成立した参院本会議=28日午後
2024年度予算が与党などの賛成多数で可決、成立した参院本会議=28日午後
参院本会議で2024年度予算が可決、成立し、一礼する岸田首相。手前左は鈴木財務相=28日午後
参院本会議で2024年度予算が可決、成立し、一礼する岸田首相。手前左は鈴木財務相=28日午後
首相官邸で行われた岸田首相の記者会見=28日夜
首相官邸で行われた岸田首相の記者会見=28日夜
記者会見する岸田首相=28日夜、首相官邸
記者会見する岸田首相=28日夜、首相官邸
記者会見する岸田首相=28日夜、首相官邸
記者会見する岸田首相=28日夜、首相官邸
岸田首相を取り巻く現状
岸田首相を取り巻く現状
2024年度予算が与党などの賛成多数で可決、成立した参院本会議=28日午後
参院本会議で2024年度予算が可決、成立し、一礼する岸田首相。手前左は鈴木財務相=28日午後
首相官邸で行われた岸田首相の記者会見=28日夜
記者会見する岸田首相=28日夜、首相官邸
記者会見する岸田首相=28日夜、首相官邸
岸田首相を取り巻く現状

 ▽青写真
 「デフレから完全脱却する千載一遇の歴史的チャンスを手にしている」
 28日夜、官邸。首相は予算成立を受けた記者会見で意気込んだ。冒頭は経済政策の説明に多くを割き「賃金が上がることが当たり前という前向きな意識を社会全体に定着させる」とも訴えた。
 「経済の再生が岸田政権の最大の使命」と表明した施政方針演説から約2カ月。今春闘では大手で賃上げの波が起き、日銀はマイナス金利政策の解除を決めた。6月には所得税・住民税減税も控える。官邸筋は「国民に景気改善を実感してもらえば、負の連鎖から脱却できる」と説く。
 経済で弾みをつけ、外交で目先を変え、4月28日投開票の衆院3補選へつなげる。その先は自らの手で衆院解散を―。そんな青写真を描く首相にとって、8日からの国賓待遇の訪米も、局面転換に向けた「またとない機会」(外交筋)というわけだ。
 ▽楽観ゼロ
 とはいえ政権内に楽観視する向きは皆無だ。裏金事件の直撃により、3月の共同通信世論調査で、内閣と自民の支持率は12年の政権復帰以来、最低水準の20%台に沈んだ。真相究明とけじめが、首相の肩に重くのしかかり、政権運営と解散判断は容易ではない。
 28日の参院予算委員会前の理事懇談会では、自民側が、22年3月にも安倍派幹部が資金還流を巡る会合を開いた可能性に触れた。首相は続く予算委で、2月の党調査の報告書には記載されていないとしたものの「疑念が残っている」と認めた。
 野党は、安倍派に影響力を持つ森喜朗元首相の聴取を求めている。首相は「政治責任を明らかにするため必要な方ということで聴取対象に含まれ得る」と言葉を選んだが、追い込まれた末の答弁との印象は否めない。
 ▽世論との戦い
 首相は訪米前に裏金をやめなかった安倍派幹部4人に重い処分を科す方向だ。ただ今月26、27日の追加聴取で何が明らかになったのかは説明していない。同派幹部の一人は「根拠が定まっていないのに処分されるなんておかしいだろう」と反発しており、禍根を残す可能性が高い。
 党内の亀裂を最小限に抑えながら、どう幕引きを図るか。与野党には首相自身の責任を問う声も依然くすぶる。一方、世論の納得を得られなければ、3補選や解散戦略に影響するのは必至だ。自民幹部は「これからは世論との戦いになるな」と予告する。
 苦境に立つ首相。会見では解散について聞かれると、経済政策とは異なり多弁さは影を潜めた。「解散は今、何も考えていない。信頼回復をはじめ、先送りできない課題に集中したい」

いい茶0

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