テーマ : 読み応えあり

【米EV、普及に逆風】高コスト重荷で需要一服 新興苦戦、テスラ株低迷

 米国で電気自動車(EV)普及への逆風が目立っている。コストの高さが重荷となり需要に一服感が見られるほか、脱炭素に向けEV普及を目指すバイデン米政権の動きも鈍くなっている。事業環境の変化を受け、新興EVメーカーの経営危機も表面化し、業界を先導してきたテスラも株価低迷が続く。

展示されている米テスラのEV「モデル3」=2023年5月、米西部カリフォルニア州(ロイター=共同)
展示されている米テスラのEV「モデル3」=2023年5月、米西部カリフォルニア州(ロイター=共同)
米デトロイトにあるテスラの充電施設=2022年11月(AP=共同)
米デトロイトにあるテスラの充電施設=2022年11月(AP=共同)
テスラの販売台数と増加率の推移
テスラの販売台数と増加率の推移
テスラの株価の推移
テスラの株価の推移
展示されている米テスラのEV「モデル3」=2023年5月、米西部カリフォルニア州(ロイター=共同)
米デトロイトにあるテスラの充電施設=2022年11月(AP=共同)
テスラの販売台数と増加率の推移
テスラの株価の推移

 ▽2万台売却
 「保有するEVの3分の1に当たる約2万台の売却を決定した」。米レンタカー大手のハーツ・グローバル・ホールディングスは1月、EVの保有割合を減らすことを公表した。従来車より補修費などの維持コストがかさみ、採算が悪いことが背景にあると説明する。
 充電インフラの不足も壁となり利用者が敬遠したとみられ、売却資金の一部をガソリン車の購入に充てる方針を明らかにした。3月には、EV導入を推進したシャー最高経営責任者(CEO)の辞任も明らかにした。
 新興EVメーカーも苦戦が続く。米フィスカーは2023年12月期に約7億6千万ドル(約1150億円)の赤字を計上。販売不振が要因で、24年3月18日に在庫調整のため6週間生産を中止すると発表した。資金繰り悪化を受けて大手メーカーと提携交渉中とされ、ロイター通信は日産自動車が出資を検討していると報じた。
 ▽利益半減
 新しい商品をいち早く採用する「アーリーアダプター」と呼ばれる消費者の購入が一巡する中、EVの先駆者テスラも販売が伸び悩む。主力車種の値下げで巻き返しを図ったものの、昨年10~12月期は本業のもうけを示す営業利益が前年同期比47%減となった。株価は振るわず、24年3月末時点は昨年のピークと比べて約6割に沈んでいる。
 EVはガソリン車やハイブリッド車(HV)よりも一般的に価格が高めで、日系自動車メーカー関係者は「米国でのEV拡大ペースは想定よりも鈍い」と指摘する。一方、HVの販売は好調で「EVよりHV向けの車載電池の増産投資が必要になるかもしれない」と状況の変化を口にした。
 ▽踊り場
 米メディアによると、EV普及を後押ししてきたバイデン政権が3月に公表した排ガス規制の最終案は、昨年4月に示した厳格な当初案に比べると内容が緩和された。厳しい規制によりEV導入を促す狙いがあったものの、今年11月の米大統領選を控え、産業界に配慮したとみられている。
 再登板を狙うトランプ前大統領は「反EV」を鮮明にする。米国のEV普及は踊り場を迎えたと言え、新車のラインアップや投入時期といったメーカーの経営戦略にも影響が及びそうだ。(ニューヨーク共同=杉山順平)

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞