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【日経平均4万円突破】上昇ペース、速すぎる 米国株のバブルに追随 第一生命経済研究所首席エコノミスト 熊野英生

 日経平均株価が4日、初めて4万円を超えた。2月22日にバブル経済期のピークに付けた最高値(3万8915円)を約34年ぶりに更新してから、まだ数日しかたっていない。株価の上昇ペースは速すぎる。振り返ると昨年5月17日に3万円を回復してから9カ月余りで4万円の大台を付けるというスピード感である。警戒を要する。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト

 今の株高がバブルと疑う人は多いだろう。ただ、バブルなのは日本の株価ではなく、米国の株価なので、米国株につられて日本の株価上昇のペースが加速しているのが実情だ。
 例えば、米国は人工知能(AI)と半導体ブームの渦中にある。生成AIが応用されて、企業収益がどこまで上がるのかに関心が集まっているが、その期待度は大きすぎる。
 生成AIに不可欠な画像処理半導体の大手、米エヌビディアの株式時価総額は先月、2兆ドル(約300兆円)を突破した。東京証券取引所を中心とする日本取引所グループ(JPX)の時価総額は6兆3400億ドル(1月末時点)なので、エヌビディア1社で日本全体の3分の1近くを占める計算になる。生成AIへの期待が強いとしても、これは過剰であろう。
 実は日本株と米国株の値動きは、ほぼ連動している。米投資家は、運用する株式の中で米国株の価格が急伸したために、運用資産の一部を日本株に振り向けてバランスを取ろうとしている。
 最近では、海外投資家が軟調な中国株から日本株に資金をシフトさせ、日経平均の上昇を演出した側面もある。米国株市場に比べて日本株の市場規模は小さいので、米国から大量の資金が流入すると、株価は急上昇する。
 では、日米の株価は今後どうなりそうか。米国では2024年中に連邦準備制度理事会(FRB、中央銀行に相当)の利下げが予想されるほか、11月には米大統領選を控えるなど大イベントがめじろ押しだ。株価は一本調子にならず、乱高下するのは必至だ。
 AIや半導体への期待感が強い半面、企業業績がそれに追い付いていけるかどうかも注目点である。米利下げは、株価の大きなプラス材料となるが、米国経済が好調なだけに、予想よりも遅れる可能性がある。
 6~9月ごろに米利下げが始まるとすれば、その前後で株価の変動が予想される。また米大統領選では、トランプ前大統領が返り咲くかどうかに関心が集中している。16年の大統領選でトランプ氏の当選が決まると、株価は急上昇した。今回も同じことが起こるのかどうかも注目材料だ。
 日本の株価の行方は、米国の株価次第となる面が強い。日経平均は今年末までの間、3万8000円~4万2000円の範囲内で推移すると見込んでいる。
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 くまの・ひでお 1967年、山口市生まれ。横浜国立大経済学部卒。日銀を経て、第一生命経済研究所に入り、2011年から現職。専門は財政・金融政策など。

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