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鵜飼いのウ、捕獲し各地へ 江戸期の伝統、技術者3人 全国唯一、茨城・日立

 茨城県日立市で、全国で唯一、鵜飼いのために野生のウミウを捕まえる「鵜捕り」が活躍している。捕獲技術を持つ人は減り続け、現在は見習いも含め3人。江戸時代から続く伝統を絶やすまいと、捕獲小屋や漁の様子を観光客に公開しながら奮闘している。

茨城県日立市の伊師浜海岸に飛来したウミウ(日立市観光物産協会提供)
茨城県日立市の伊師浜海岸に飛来したウミウ(日立市観光物産協会提供)
「鳥屋」でウミウ捕獲の様子を再現する篠木拓さん=2月、茨城県日立市
「鳥屋」でウミウ捕獲の様子を再現する篠木拓さん=2月、茨城県日立市
「鳥屋」でウミウ捕獲の様子を再現する篠木拓さん=2月、茨城県日立市
「鳥屋」でウミウ捕獲の様子を再現する篠木拓さん=2月、茨城県日立市
ウの捕獲の様子と出荷先
ウの捕獲の様子と出荷先
茨城県日立市の伊師浜海岸に飛来したウミウ(日立市観光物産協会提供)
「鳥屋」でウミウ捕獲の様子を再現する篠木拓さん=2月、茨城県日立市
「鳥屋」でウミウ捕獲の様子を再現する篠木拓さん=2月、茨城県日立市
ウの捕獲の様子と出荷先

 2月下旬、日立市十王町の伊師浜海岸。「ここでは鵜飼いはやっていないんですよ。ウミウを捕獲して全国の鵜飼い地に送っています」。新人の篠木拓さん(52)がウミウを捕獲する小屋「鳥屋」へ観光客を案内していた。
 ウミウは全長80センチほどの渡り鳥で、北海道や千島列島で繁殖し、本州や九州で越冬する。休憩地点となる伊師浜海岸では4~6月と10~12月の年2回、岐阜の長良川や京都の嵐山など全国11の鵜飼い地向けにウを捕獲し、それ以外の時期は鳥屋を無料公開している。
 鳥屋があるのは海岸沿いの高さ15メートルの断崖絶壁。外におとりのウをつなぎ、おとりに誘われた野生のウが舞い降りると、先端がU字になったかぎ棒を足首に引っかけ、鳥屋へ引きずり込む。わずか数分の早業だが、ベテランの柴田勝典さん(53)は「くちばしがカミソリのように鋭い。かまれて血だらけになったこともあった」と笑う。
 捕獲するのは体重2・5キロ以上で、2歳ごろまでの幼鳥。日立市を通じて年間40羽ほどの依頼があり、条件に合わないものは放鳥するため捕獲数はその3倍にも上る。獣医師がワクチン接種や検査をし、10日間の経過観察を経て各地へ送る。
 日立市によると、戦後伊師浜海岸だけで5軒ほどの捕獲業者があったが、波の浸食による捕獲場の崩落や後継者不足が進み、1970年代後半には1軒だけに。最近も、昨年12月に公募で篠木さんが採用されるまで柴田さんと大高敦弘さん(72)の2人態勢だった。
 捕獲期には日の出前から身を潜めてウを待ち、天候や風向きによっては1週間以上飛来しないこともある過酷な仕事。柴田さんは農業、篠木さんはスーパーのアルバイトを掛け持つ。
 修業中の篠木さんは初シーズンだった昨年12月、先輩2人の捕獲を間近でひたすら見続けた。ウに気付かれないタイミングでかぎ棒を出し、鳥屋に引き込んだら暴れないよう手早くくちばしを縛る。「野生相手にどうなるか分からない中、結果が出るのが面白い」。盗みたい技は山ほどあるという。
 週末には100人近い観光客が訪れ、秋には漁の再現イベントを開くなど認知向上に努める。篠木さんは「多くの人に鵜捕りの仕事を知ってもらい、観光地としての価値を上げたい」と話した。

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