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コオロギ食、逆風で岐路 期待の半面、根強い抵抗感

 栄養が豊富で人類の食料危機を解決すると期待されるコオロギ食に逆風が強まり、岐路に立たされている。企業が続々と参入したが、原材料の高騰に加え消費者の抵抗感が根強く、広がりに欠けている。事業者に対する心ない中傷も起きており、地道な普及活動が必要そうだ。

徳島県の学校給食で提供された、コオロギ(左奥)の粉末を使用したコロッケ(右)=2022年11月、徳島県小松島市
徳島県の学校給食で提供された、コオロギ(左奥)の粉末を使用したコロッケ(右)=2022年11月、徳島県小松島市
コオロギの粉末を使ったコロッケの調理=2022年11月、徳島県小松島市
コオロギの粉末を使ったコロッケの調理=2022年11月、徳島県小松島市
世界の昆虫食市場規模の推移
世界の昆虫食市場規模の推移
徳島県の学校給食で提供された、コオロギ(左奥)の粉末を使用したコロッケ(右)=2022年11月、徳島県小松島市
コオロギの粉末を使ったコロッケの調理=2022年11月、徳島県小松島市
世界の昆虫食市場規模の推移

 徳島県では2022年11月、国内で初めて学校給食でコオロギが使われた。コオロギの生産や商品開発を手がける徳島市のベンチャー企業「グリラス」が製造する粉末を使ったコロッケで、高校生が興味津々で食べる様子は話題となった。
 今年に入り、同社はコオロギを使った飼料開発に向けた研究所を閉鎖した。コオロギの餌となる原料が高騰し「企業努力による経費削減だけでは吸収できない」ことが理由だ。加えて昆虫食に批判的な人が一定数おり、「苦情の電話が寄せられ、苦しめられる事態になった」という。
 敷島製パン(名古屋市)は20年12月にコオロギの粉末をパンに配合した「コオロギカフェ」シリーズを発売。当時は販売開始2日で完売し好評だったが、23年に交流サイト(SNS)で昆虫食批判が出て同社商品もやり玉に挙げられた。コオロギカフェシリーズは現在、終了している。
 国連食糧農業機関(FAO)は13年の報告書で、昆虫食を新たなタンパク源として推奨した。世界の人口は今後も伸びが見込まれており、食料が不足するとの懸念が出ていることが背景にある。日本能率協会総合研究所は昆虫食の世界市場が19年度の70億円程度から、25年度に1千億円規模になると試算する。
 成長を見込んで参入した企業は多かったが、必ずしも順調とは言えないようだ。今年1月には、ITを手がけながらコオロギ食に進出したインディテール(札幌市)が札幌地裁から破産手続きの開始決定を受けた。帝国データバンク札幌支店によると、コオロギの製品販売が軌道に乗らず資金繰り悪化を招いたという。負債総額はグループ会社を含め計2億円を超える。
 国内でも、長野など一部の地域では以前から昆虫が珍味として食べられてきた。ただ、多くの人にとってはなじみが薄く、食料不足への危機感も高まっていないため、コオロギ食に対する反発を生んでいるとみられる。
 日本総合研究所の石川智久調査部長は「栄養価が高いのは事実。昆虫を漢方薬やサプリメントに活用した方が抵抗感が少ない」と指摘。「活用技術を発展させ、最終的に受け入れられやすいように食品に応用した方が良いのでは」と述べた。

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