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【ウクライナのスタートアップ】最新技術、戦時下で商機 義手や自律ロボット開発

 ロシアの侵攻を受けるウクライナで、最新の技術を活用したスタートアップ(新興企業)が成長している。ドローン(無人機)に代表される防衛産業だけでなく、人工知能(AI)を活用した義手や人手不足を補うロボットなどを開発。戦時下でも需要の高い製品に商機を見いだしている。

AIを使った義手を着用する「エスパー・バイオニクス」のスタッフ=3月13日、キーウ(共同)
AIを使った義手を着用する「エスパー・バイオニクス」のスタッフ=3月13日、キーウ(共同)
AIを使った義手について説明するディオルディツァさん=3月13日、キーウ(共同)
AIを使った義手について説明するディオルディツァさん=3月13日、キーウ(共同)
「デウス・ロボティクス」が開発した自律型ロボット=3月13日、キーウ(共同)
「デウス・ロボティクス」が開発した自律型ロボット=3月13日、キーウ(共同)
取材に応じる「ウクライナ・スタートアップ・ファンド」のカルタショフCEO=3月22日、キーウ(共同)
取材に応じる「ウクライナ・スタートアップ・ファンド」のカルタショフCEO=3月22日、キーウ(共同)
AIを使った義手を着用する「エスパー・バイオニクス」のスタッフ=3月13日、キーウ(共同)
AIを使った義手について説明するディオルディツァさん=3月13日、キーウ(共同)
「デウス・ロボティクス」が開発した自律型ロボット=3月13日、キーウ(共同)
取材に応じる「ウクライナ・スタートアップ・ファンド」のカルタショフCEO=3月22日、キーウ(共同)

 ▽高評価
 「慣れてくれば本物の手のように動かせる」。3月中旬、キーウ(キエフ)市内のビルで「エスパー・バイオニクス」の幹部、ボグダン・ディオルディツァさん(25)が説明した。開発した義手はAIが筋肉の動きを学習して指を動かす。戦場で手を失った兵士からも高評価を得た。
 2019年に設立し、義手以外の製品開発にも注力しようとしていた時に侵攻が始まった。価格は日本円で数百万円と高いが、負傷兵対象の補助金などを活用し、侵攻前の6倍に当たる60人以上が使用しているという。
 ディオルディツァさんによると、利用者によって負傷の程度などが異なり、動作の精度を高めるには多くのデータが必要になる。「戦争でユーザーが増え、皮肉にも開発が進展した」と話した。
 ▽人手不足
 働き盛りの多くが軍に入隊し、産業界は人手不足が深刻化。ウクライナの企業団体「欧州ビジネス協会」は「兵士1人を納税者6人が支える」負担の重さを懸念する。
 こうした中、注目されているのがロボットの活用だ。「デウス・ロボティクス」は運搬と仕分けを担う自律走行のロボットを開発し、侵攻後の22年夏に物流大手「ノバ・ポシタ」の倉庫で運用が始まった。担当者は「人手不足に苦しむ国内企業からの問い合わせが相次いでいる」と話す。
 ▽起業拡大
 政府系の「ウクライナ・スタートアップ・ファンド」によると、ウクライナには現在、法人登記し目玉商品があるスタートアップが約2500社ある。このうち約200社は侵攻後に設立され、拡大が続いている。
 同ファンドのカルタショフ最高経営責任者(CEO)は、侵攻後に産学官の協力が深まっただけでなく「ウクライナへの注目が高まり、海外から資金が集まった」ことを要因に挙げた。企業の中には、日本からの投資や日本の大学との共同開発を望む声もあるといい、連携に期待を示した。(キーウ共同=田中大祐)

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