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社説(6月12日) 知事選後半戦へ 踏み込んだ政策論争を

 4選を目指す現職の川勝平太氏(72)と前参院議員の新人岩井茂樹氏(53)の一騎打ちとなった静岡県知事選(20日投開票)は17日間の選挙戦の後半戦に入った。
 政党色を抑えながらも立憲民主、国民民主両党県連の支援などを受ける川勝氏の「継続」か、川勝氏が初当選した2009年知事選以来の自民党推薦候補となった岩井氏による「刷新」か。知事選は与野党対決の様相を呈し、2氏を支える政党や団体の動きも熱を帯びている。
 ただ、双方とも組織内への浸透には不安を残す。有権者への広がりも欠き、県内の選挙ムードが高まってきた様子はうかがえない。争点を巡る主張が相手の政治姿勢や政治手法への批判にとどまり、内容を伴った政策論争へと深まっていないことが一因ではないか。
 終盤に向け、争点とされる新型コロナウイルス対策やリニア中央新幹線トンネル工事を巡る問題などについて、何をいつまでに実行するのかといった具体的な公約にまで踏み込んだ論戦を求めたい。
 コロナ対策を巡っては県内の新規感染者が下げ止まり、インド由来変異株の広がりが懸念される状況下、県民の関心は事態の推移と本格化し始めたワクチン接種に向いている。そうした中、国と市町の間に立つ県が何をなすべきかについて2氏の主張そのものに大きな差異がなく、争点とはなり得ていないのが現状だ。コロナ後も見据えた経済対策を含め、具体案を聞きたい。
 リニア問題に関する訴えも、県民の耳目を集めているとは言いがたい。
 国土交通副大臣を務めた岩井氏の出馬で知事選の焦点になるかと思われたリニア問題は、告示前に行われた公開討論会で、岩井氏が川勝氏の問いに答えて「ルート変更や工事中止も選択肢」と述べ、流域住民の理解が前提とする姿勢を打ち出した。川勝氏も「大変重要な発言」と応じ議論は熱を帯びたが、双方の見解の違いが一層分かりにくくなった印象も拭えない。以後は手法や姿勢を巡る論戦へと変質し、失速した感がある。
 特に気掛かりなのは両氏の訴えが若い世代に訴求していないように感じられる点だ。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて2度目の知事選。10代投票率が28・11%にとどまった前回選を思い起こし、多くの若者に訴えが届くようなメッセージを発してほしい。
 知事選と合わせて行われる県議補選も欠員各1の静岡市清水区選挙区と掛川市選挙区で告示された。掛川市は新人の無投票当選、清水区は新人3氏による選挙戦となった。

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