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難波静岡市長 リニア問題で県に異論次々 立場変わり「主張」も?…戸惑いの声 JR協議、打開に期待感も

 静岡市の難波喬司市長がリニア中央新幹線トンネル工事を巡る静岡県の対応に異論を唱える場面が増えている。4月に行われた市長選に立候補するため2022年11月に県を退職するまでは、県のリニア問題の責任者としてJR東海に厳しい姿勢で臨んだ難波氏だが、市長就任後はJRの主張に理解を示す発言も目立つ。関係者の間には、こうした変化に戸惑いの声が聞こえる一方、膠着(こうちゃく)状態に陥りがちな県とJRの協議の打開につながるとの期待感も広がる。
静岡市から県への予算要望で言葉を交わす川勝平太知事(左)と難波喬司静岡市長。難波氏は8年間副知事として川勝知事に仕え、信頼関係があるとされる=20日、県庁
 「(県は)河川管理者としての責任を放棄している」。6日に開かれた市リニア影響評価協議会で、難波氏が県の幹部に厳しい言葉で詰め寄った。大井川上流部の燕(つばくろ)沢付近にトンネル残土を盛り土するJRの計画の環境影響評価を巡り、河川管理者である県がどこまで事前に災害リスクを想定するのかを議論した場面。この場で結論は出なかったが、川勝平太知事は22日の定例記者会見で難波氏の主張を「もっともな発言」と持ち上げ、市とともに災害リスクをシミュレーションする新たな方針を打ち出した。
リニア工事に関する県と難波静岡市長の主張の違い
 4月の市長選当選直後、支援を受けた市議会最大会派「自民党市議団」を訪れ、「リニア問題は前に持っていける。健全な議論をやるためにどうしても私がやらなければならないと思っている」と意気込みを語った難波氏。6月に「技術者の立場」(同氏)で開いた記者会見では、JRが山梨県から静岡県境に向かって進めている高速長尺先進ボーリングについて「県境を掘っても(静岡県の)水は出ない」と述べ、県側のボーリングに伴う水資源流出に関する懸念は「過剰」と切り捨てた。
 難波氏の言動に、県からは「県にいた時と言っていることが違う」(幹部)と戸惑いの声が漏れる。他方、「知事は難波さんのことを一目置いており、(知事の)考えに影響を及ぼすのでないか」(別の幹部)と、JRとの議論の前進につながるとの意見も聞かれた。静岡市長選の際、難波氏と結んだ政策協定に「リニア事業の着実な推進」を盛り込んだ自民党市議団の幹部は難波氏のこれまでの姿勢を評価し、「川勝知事と直接交渉し、県を動かしてほしい」と求めた。
 自民会派と同じく市長選で難波氏を支援した市議会第2会派「創生静岡」は、異なる見方をする。幹部は「県に指摘するというよりも、静岡市長の立場で行うべき環境影響評価をまずはしっかりやるべきだ」と指摘し、「自民との関係を意識して発言しているとしたら注意が必要」と警戒した。
 (政治部・尾原崇也)

 難波市長 静岡県の主張「科学的根拠ない」
 静岡市の難波喬司市長は25日までに取材に応じ、リニア中央新幹線トンネル工事の環境影響評価に関する県の姿勢について「(JR東海に)ゼロリスクを求めているのに近い。科学的に根拠がないことを言っている」と述べ、ただす必要があるとの認識を示した。
 難波氏はトンネル残土置き場や、県境付近の高速長尺先進ボーリングに伴う水資源への影響に関する県専門部会での議論を念頭に、「(県は)ものすごい大きなリスクを与えて、(JRに)対処しろと言っているのに近い」と指摘し、事業者に求める環境保全措置としては過剰との見解を述べた。市長就任後の発言が県在籍時と異なるとの見方については「県にいたときから科学的根拠に基づいてやりましょうと言っている。ぶれていない」と否定した。市長選時に自民会派と結んだ政策協定の影響も「ない」と答えた。
 一方で、JRに対しても「妙に応援するつもりはない」と話し、リニア工事に伴う南アルプスの生態系への影響に関する議論では同社に厳しい姿勢で臨むとした。

 

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