テーマ : 大井川とリニア

静岡・浜松両政令市に新市長 議会対応と実行力注目【追跡2023③】


 4月の統一地方選で静岡市は12年ぶり、浜松市は16年ぶりに新市長が誕生した。共に公務員から政治家への転身で、幅広い支援体制を築いて当選を果たすなど共通点が目立つ2人だが、もう一つの民意である市議会への対応や関係性を巡っては違いが出ている。
当選後の対談で握手する難波喬司静岡市長(右)と中野祐介浜松市長。経歴に共通点が多い両者だが、行政手法は対照的なところも目立つ=5月18日、静岡市葵区
 「はっきり言うと、今までが遅い」。静岡市の難波喬司市長(67)は8月の記者会見で、市がJR東静岡駅北口市有地に整備を目指すアリーナの事業化を2023年度内に判断すると表明した。9月の市議会では年内にも意思決定すると述べ、事業手法などの検討を急ピッチで進める。
 アリーナ以外にも市民文化会館再整備の事業手法変更や外部有識者による「市政変革研究会」立ち上げなど、積極的に市政運営の見直しを図る難波市長。こうした姿勢に市議会最大会派の自民幹部からは「スピード感があるのはいいが、議論の丁寧さに欠ける」との声が上がる。同会派と難波市長の関係性は、蜜月とされた前市長時代から明らかに変化した。
 難波市長が力を入れるリニア中央新幹線工事の環境協議会は7~12月に4回開き、市長自ら説明する光景が定番となった。ウェブ視聴した市議は市長の熱量や知見に舌を巻きつつ、「委員を差し置き、市長の独壇場だ」とバランスの欠如を指摘した。
      ◇
 10月中旬の浜松市議会。翌日からの北海道出張を前に、中野祐介市長(53)は各会派の控室を順番に訪ねた。目的は空席となっていた3人目の副市長人事。24年1月1日の行政区再編に合わせて天竜区役所に配置し、区政全般を担う重要な役どころになるため、自ら各会派を回り、市議会に諮る人事案を説明した。
 同市議会では異例の市長による各会派への根回し。「前市政では考えられない。初めての経験。議会への配慮を感じる」。多くの市議がこう口をそろえた。
 中野市長は自民と一部経済人が擁立し、政財界の幅広い支援を受ける「オール浜松」の候補をうたって当選した。市政運営の理念にも市、地域、企業が一丸となった地方創生を掲げる。
 各方面への配慮の一方、注目は初編成となる新年度当初予算。行財政改革を求める一部経済人に対し、自民は現役世代への投資を要望するなど思惑は異なる。
 当初予算は「市民の声を積極的に取り入れる」と語る中野市長。その実行力が問われている。
 (政治部・尾原崇也、浜松総局・宮崎浩一)

 <メモ>静岡市の難波市長は自民、立憲民主、公明、国民民主の与野党が推薦し、元自民党県議と共産新人を破って初当選した。元国土交通省技術総括審議官、静岡県副知事。浜松市の中野市長は自民、公明の推薦を受け、共産推薦新人との選挙戦を制した。元総務省都道府県税課長で、北海道副知事も務めた。

いい茶0

大井川とリニアの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞