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透水係数小さくし再計算 国交省会議、JR提案了承 静岡県委員は変更疑問視【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線トンネル工事に伴う南アルプスの環境への影響を議論する国土交通省専門家会議で、JR東海は大井川上流部の沢への影響を分析する際、これまでの中下流域の流量に関する議論で使用していた水収支解析(流量予測)モデルのうち主要断層部の透水係数を小さくして計算し直すことを提案し、了承された。影響が大きい沢で毎秒60リットル減少すると予測していた流量減も、軽減されることが予想される。ただ、解析結果に不確実性があることはJR自身も認めていて、県の専門部会委員からは数値を変更する必要性を疑問視する声が上がる。

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 11日に都内で開かれた第8回国交省専門家会議で、JRが入力データの一部変更を提案したのは静岡市の水収支解析モデル。流域に断層を含む比較的流量が少ない沢では観測平均値に対して解析値が小さくなる傾向があるとし、主要断層の透水係数を10分の1小さく設定することを提案した。前回の会議で解析精度を高めるよう要望していた委員側からは特に異論は出ず、事務局を務める国交省鉄道局は了承されたとの認識を示した。
 これに対し、県専門部会の塩坂邦雄委員(地質専門家)は「解析結果は文献値に基づく計算が多く、実情に合っているのか疑問。(新たな解析結果が)独り歩きするのは危険だ」と指摘する。山梨県境や西俣川直下の断層帯で採水し、透水係数を測定した上で影響を分析するべきと主張する。森下祐一部会長(静岡大客員教授)は「さまざまな仮定に基づいた解析モデルだということを踏まえて使用する必要がある」と、国の専門家会議に慎重な議論を求める。
 静岡市の水収支解析モデルは、リニア工事が南アルプスの自然環境に与える影響を調べるため同市が2017年3月に専門業者に委託して独自に作成した。主要断層の幅は文献値から約20~250メートルに設定している。今回、JRのボーリング調査で判明した山梨県境付近の断層帯の幅は少なくとも約700メートルあり、西俣川直下の断層帯では約400メートルにわたり地質が悪い状況が続いていて、同モデルの適用について県、市の担当者とも取材に対し、疑問を呈した。県の担当者は「解析モデルは南アルプスの地下水位への影響を解析するのに十分なモデルではない」と指摘し、県の専門部会委員に透水係数の妥当性を確認するとしている。

 透水係数 水が土壌を通過する際の通りやすさの度合いを示す。土壌の透水係数が「毎秒1×10のマイナス1乗メートル」の場合は水が1秒に0・1メートル進むことを指し、数値が小さいほど水を通しにくくなる。JR東海は主要断層の透水係数を「毎秒1×10のマイナス5乗メートル」から「毎秒1×10のマイナス6乗メートル」に変更するとした。これまでの中下流の流量に関する議論には影響は生じないとしている。

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