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川勝平太・静岡県知事 新春インタビュー 浜松新球場2万2千人規模ドームを/富士山中心に「文化の首都」世界に発信

 静岡県の川勝平太知事は31日までに静岡新聞社のインタビューに応じ、県が浜松市西区の遠州灘海浜公園篠原地区に整備する新野球場について、2万2千人規模のドーム型が望ましいとの認識を明らかにした。市や経済界などでつくる建設促進期成同盟会の要望を踏まえ、「地元の希望を県議会も無視できないはずだ」と述べた。球場の構造と規模に対する考え方を知事が明示したのは初めて。

新年の展望を語る川勝平太知事=2022年12月22日、県庁
新年の展望を語る川勝平太知事=2022年12月22日、県庁

 野球場を巡っては、照明によるアカウミガメへの影響を避けるため、事実上、構造は屋根で覆われたドームか照明設備のない野外球場に絞られた一方、規模の方針はまとまっていない。県は2023年の県議会2月定例会での絞り込みを目指すが、概算事業費370億円を見込む2万2千人規模のドームには、財政負担の重さから異論も根強く、実現するかどうかは不透明だ。
 川勝知事は野球場に関し「県議会の議論を待つ」との姿勢を示しながらも、22年12月に期成同盟会から要望を受けたことに触れ「照明を遮断するとすればドームしかない」と指摘した。「(新野球場の建設には)数年かかるが、その間にプロ野球の動きが静岡絡みで出てくる可能性がある」と述べ、約2万2千人収容の草薙球場(静岡市駿河区)と同規模が望ましいとの考えも示した。
 県は2月定例会で、経済波及効果や費用対効果の分析結果を踏まえ、球場の規模や構造ごとに評価案を提示する方針。県議会で議論がまとまればパブリックコメント(意見公募)を実施し、6月ごろの基本計画策定を目指している。
 市と市議会、浜松商工会議所、市自治会連合会でつくる期成同盟会は、プロ野球開催が可能な2万2千人規模で幅広いイベントが実施できる全天候型ドームにするよう求めている。一方、県内のアマチュア野球団体でつくるNPO法人県野球協議会は、球場使用料が高くなる懸念から1万5千人規模を要望している。

川勝知事インタビュー 一問一答(詳報)
 川勝平太知事は2023年に15年目の県政運営に臨む。県議会で自民会派と対立が先鋭化する中で迎える4月の統一地方選や、市長が交代する静岡・浜松両政令市との連携の在り方、解決に向けて議論が続くリニア中央新幹線問題などへの考えを聞いた。
 ―23年はどのような年にしたいか。
 「(22年は)新型コロナウイルスに始まり、コロナに終わった。その間に台風15号災害が起き、保育施設の事件で怒りに震えた。そのような中で、日中韓の3カ国でそれぞれ1都市が文化を発信する『東アジア文化都市』の国内都市に選ばれた。23年は富士山の世界遺産登録10周年でもあり、富士山を中心に本県を『文化の首都』として世界に発信する。これだけ世界クラスのものがある自治体は全国、世界でどこにもない。静岡県はSDGs(持続可能な開発目標)のモデルになりうる」
 ―具体的に展開する事業は。
 「富士山が中心になるだろう。1月には石川県の白山、富山県の立山と日本三霊山の協定を結ぶ。世界農業遺産の茶をはじめ、日本一を誇る食材や温泉、スポーツ、浜松まつりの凧(たこ)揚げや本県が培ってきた防災、生活スタイルも広い意味で文化であり、何もかも全て対象になる。360万人の県民全員が主役。富士山だけでなく伊豆半島や南アルプスなどの絶景空間も生かす。既に、食文化に触れるガストロノミーツーリズムを進めているが、県東部を拠点に柔道、剣道、空手道などを楽しむ武道ツーリズムも広めたい」
 ―4月に行われる統一地方選には関与していくのか。
 「21年は知事選、参院補選、衆院選と連続した中で勢いでやったことが、結果的に対立を生んだ。ノーサイドで戦いは終わった。わたしは県民の代表。皆さんの前でも宣言したように公人として選挙には関与しない」
 ―静岡、浜松の両市長が不出馬を表明してトップが代わることになる。2政令市との連携の進め方は。
 「一緒にやらなければいけないことはたくさんある。次に市長を務める方は、いずれもこちらから干渉の必要の無い、任せられる人がなるだろう。政令市長会は特別自治市を目指す方針を示している。政令市の自律性を尊重し、介入することなく共同歩調でやっていく。県として伊豆、東部、中部、西部の自治体に力を尽くす。基礎自治体の自主性を大事にしていくことが一番の原則だ。県も山梨県や神奈川県の箱根地域など県境を越えた広域連携を進めたい」
 ―リニア問題では、高速長尺先進ボーリングの先行掘削が1月に始まり、4月にも静岡県境に達する。JR東海とどう向き合うか。
 「水抜き工事を兼ねるとの見方が常識的で、抗議している。地元の了解抜きに強引に実施すれば、JR東海の信頼に関わる。県環境影響評価に関わる生態系、監視体制、残土処理などまだ議論が残されている。田代ダム取水抑制案についても説明責任はJR東海にある。議論に誠実に対応できないのであれば考え直せと言いたい。トップの資質が問われている」
 (聞き手=政治部・青島英治、森田憲吾、尾原崇也)

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