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リニア国交省会議 年内にも生態系報告書 1年5カ月の協議終了 静岡県の議論継続要求却下

 リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの生態系や自然環境に与える影響を議論する国土交通省の第14回専門家会議が7日、東京都内で開かれ、事務局を務める同省が、9月の前回会議で示した「報告書案」の修正版を提示した。微調整を経て年内にも成案化することで中村太士座長に一任し、2022年6月から1年5カ月間続けた協議が終了した。県は、生態系に与える影響や対策などの検討が不十分として議論の継続を求めたが、受け入れられなかった。

リニア工事の環境保全に関する取りまとめの議論を行った国専門家会議=7日午前、東京都内
リニア工事の環境保全に関する取りまとめの議論を行った国専門家会議=7日午前、東京都内

 県とJR東海の協議が膠着(こうちゃく)状態に陥ったことから、20年4月に大井川水資源問題を皮切りに始まった国交省専門家会議の議論は一定の区切りを迎えた。
 自然環境に関する報告書案は「大井川上流部の沢の水生生物」「高標高部の植生」「トンネル湧水放流と残土置き場」の三つのテーマについてJRが予測する影響や対策は、いずれも環境保全措置の進め方として適切と結論づけた。
 修正版では「薬液注入」によるトンネル湧水低減対策を「ボーリングなどで把握した科学的データに基づき行う」などと追記した。 影響が確認された状況ごとに適宜対応を講じる「順応的管理」の手法を基本とすることや、生態系が損失した場合の代償措置のあり方など報告書案の骨格部分は前回から変更せず、JRが県、静岡市などと連携して今後検討するとした。
 このほか、県が11月1日に同省に送付した意見書を踏まえて、沢の水生生物への対策で「トンネル掘削前から流量減少が予測される沢の生物の生息・生育状況の調査を実施する」などの記述を加えた。ただ、県の森貴志副知事は、具体的な指標種の抽出が行われていないとし、「意見書が完全に反映されている認識はない」と述べた。
 (政治部・尾原崇也)

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