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リニア国会議の目的とそぐわず 静岡県、報告書案に意見書

 静岡県は1日、リニア中央新幹線トンネル工事の自然環境への影響に関する国土交通省専門家会議がまとめた「報告書案」に対する意見書を同省に送付した。県は文書の中で、同会議での議論が不十分なため、このまま案がまとまり、県有識者会議専門部会での協議が再開しても「再度議論する必要が生じる」と懸念を示し、「JR東海に具体的な助言・指導を行うとして立ち上げられた国会議の目的にそぐわない」と強い言葉でけん制した。

国会議の「報告書案」に対する県の意見書の要点
国会議の「報告書案」に対する県の意見書の要点


 県は、今後も国会議で議論が必要な課題として主に6項目を挙げた。ただ、事務局の国交省鉄道局は年内にも報告書を取りまとめる考え。これまで県が同局に提出した意見書5件はいずれも議論に反映されず、今回も考慮されるかは不透明だ。
 県は特に、大井川上流域の沢の水生生物に影響が生じた場合の代償措置の在り方を問題視し、報告書案が「今後のJRと県、静岡市などの協議に委ねる」との趣旨の記述にとどまり、具体的な結論を示さなかったと指摘した。2020年4月に設置された国会議が、当時膠着(こうちゃく)状態に陥っていた県専門部会委員らとJRの協議の打開を狙いとしていた経緯を踏まえ、今回このまま報告書案が確定した場合に「JRとの対話で、重複して時間が必要となる事態を強く懸念する」とした。
 報告書案で、国会議が環境保全措置の考え方として取り入れた「順応的管理」についても、「工事着手前の生態系への影響予測をしていない現在の案では、JRが適切に実施できない」と懸念を示した。
 (政治部・尾原崇也)

 水生生物への影響予測 議論求める
 県は意見書の中で、国会議がこれまで議論してきた「大井川上流部の沢の水生生物」「高標高部の植生」「トンネル湧水と残土置き場」の三つのテーマのいずれにおいても議論が不足していると指摘した。
 水生生物については、議論が沢の流量管理にとどまり、生物に対する影響予測を行っていないため、このままでは具体的な保全措置の計画が立てられないと指摘した。生物への影響予測に関する議論に加え、議論の前提となる現状の生息状況の追加調査をJR東海に求めるべきとした。
 生物への影響が分からなければ、「失われる環境に見合う新たな環境」はどのようなものが適切かも判断できないとし、代償措置の議論も再考を求めた。
 沢の流量減少予測の前提になっているJRの水収支解析モデルについては、より実態に即した予測を行うために文献値ではなくボーリング調査などで得られている実測データを用いるべきとした。
 高標高部の植生への影響や、トンネル湧水を大井川に放流したときの底生生物への影響についてもさらなる検証を求めたほか、残土置き場に関しては、県が認めていない計画を前提に国会議が見解を示すのは適当でないとした。

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