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リニア工事の国交省会議が報告書提出 静岡県やJR 環境保全策議論へ

 リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの生態系に与える影響を議論してきた国土交通省専門家会議は7日、報告書を取りまとめ、斉藤鉄夫国交相に提出した。JR東海と県、静岡市などが年明け以降、報告書が示す環境保全措置の考え方を踏まえ、具体的な対策の議論を本格化させる。

斉藤鉄夫国土交通相(左)にリニア工事の環境保全に関する報告書を提出する中村太士専門家会議座長=7日午後、国交省
斉藤鉄夫国土交通相(左)にリニア工事の環境保全に関する報告書を提出する中村太士専門家会議座長=7日午後、国交省

 中村太士座長(北海道大教授)が同省を訪れ、斉藤国交相に手渡した。国交相は「科学的な議論を丁寧に積み重ねてもらった。報告書に沿って、必要な対策をとるようにJR東海に求めたい」と述べた。8日に同社の丹羽俊介社長に面会し、直接要請するとした。
 報告書の提出後、中村座長は2022年6月の協議開始以降初めて、報道陣の取材に応じ、「あまり長く議論を続けても国民の理解は得られない」と、スピード感を意識して議事進行していたと明かした。県は沢の水生生物に対する追加調査や工事前の影響予測を求めたが、座長は「今ある知識、知恵の中でいかに自然を保全するかという(国会議の)考え方のほうがより社会の要請に応えている」と主張し、「研究ではない。いつまでもやっていいということではない」と県の姿勢に不満を示した。
 国の会議は「大井川上流部の沢の水生生物」「高標高部の植生」「トンネル湧水放流と残土置き場」の三つのテーマで、JRの環境影響予測や保全措置が適切か議論した。
 報告書では、影響が確認された状況ごとに適宜対策を検討する「順応的管理」の考え方を採用し、地質調査に基づいたトンネル湧水の低減措置などを講じることで「環境への影響を最小化できる」と評価した。JRに対し、県や静岡市など地元関係者と十分に意思疎通を図ることを求めたほか、国に対してはJRによる対策の着実な実行を継続的に確認するよう要請した。
 (政治部・尾原崇也)

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