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リニア国交省会議が報告書案提示 「順応的管理」の手法で環境保全 静岡県は不満も

 リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境に与える影響を議論する国土交通省の第13回専門家会議が26日、東京都内で開かれ、事務局を務める同省がこれまでの議論をまとめた報告書案を提示した。影響が確認された状況ごとに適宜対策を講じる「順応的管理」の手法で環境保全を図るなどの内容。静岡県は自然環境に与える影響を明確にした上で、JR東海に具体的な回避策を指導することを求めていて、報告書案に不満を漏らした。

国土交通省専門家会議終了後、取材に応じる静岡県の担当者=26日午後、東京都
国土交通省専門家会議終了後、取材に応じる静岡県の担当者=26日午後、東京都
環境保全に関する報告書案のポイント
環境保全に関する報告書案のポイント
事務局が示した報告書案について議論した国土交通省の第13回専門家会議=26日午前、東京都
事務局が示した報告書案について議論した国土交通省の第13回専門家会議=26日午前、東京都
国土交通省専門家会議終了後、取材に応じる静岡県の担当者=26日午後、東京都
環境保全に関する報告書案のポイント
事務局が示した報告書案について議論した国土交通省の第13回専門家会議=26日午前、東京都

 報告書は大井川中下流域の水資源に与える影響をまとめた「中間報告」(2021年12月公表)に続く、専門家会議としての一定の結論となる。同省はこの日の委員の意見を反映させた上で「早期に(報告書案の)最終化を図る」とした。
 26日示された報告書案は「自然環境が多様かつ複雑であり、すべての環境の変量を明らかにすることはできない」と記し、事前予測には不確実性が伴うことに言及した。モニタリングなどを行った上で、順応的管理により環境への影響を最小化することが環境保全措置として「最適」な手法とした。
 JRに対し、工事の影響で大井川上流部の沢の流量が管理値を超えて減少した場合には「ちゅうちょなく工事の進め方を見直すことが必要」と提言した。国の役割については「対策が着実に実行されているか継続的に確認することを検討するべき」として、引き続き関わりを求めた。
 一方で、工事で沢の流量に深刻な影響が生じた場合の具体的な対応や、生態系への影響が回避できない場合に講じる代償措置については踏み込まず、県や静岡市に議論の余地を残した。県の担当者は会議後の取材で、「最終的にまとめられる報告書の内容が県の疑問に応えている形になるのか、しっかりと確認しないといけない」と述べた。
 同会議では22年6月から、生態系管理学や地下水学の専門家がトンネル工事に伴う「大井川上流部の沢の水生生物」「高標高部の植生」「トンネル湧水放流と残土置き場」の三つのテーマについて環境への影響と対策を議論してきた。
 (政治部・尾原崇也)

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