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静岡の水流出で推定方法提示 JR東海 水量かかわらず返水 山梨県内ボーリング

 リニア中央新幹線トンネル工事に伴う大井川の減水問題について協議する静岡県有識者会議地質構造・水資源専門部会が7日、県庁で開かれ、前回に引き続き、JR東海が山梨県内で静岡県境に向かって実施している高速長尺先進ボーリングの湧水対策を議論した。同社は、静岡県が懸念を示している静岡県内の地下水流出について流出量を検討するための具体的な方法を示し、流出が推定される場合は水量にかかわらず原則返水するとの方針を提示した。

リニア中央新幹線トンネル工事を巡り、山梨県内での高速長尺先進ボーリングなどについて議論した静岡県有識者会議専門部会=7日午前、県庁
リニア中央新幹線トンネル工事を巡り、山梨県内での高速長尺先進ボーリングなどについて議論した静岡県有識者会議専門部会=7日午前、県庁
県境付近(山梨県内)における高速長尺先進ボーリングに関する主な意見
県境付近(山梨県内)における高速長尺先進ボーリングに関する主な意見
リニア中央新幹線トンネル工事を巡り、山梨県内での高速長尺先進ボーリングなどについて議論した静岡県有識者会議専門部会=7日午前、県庁
県境付近(山梨県内)における高速長尺先進ボーリングに関する主な意見

 森貴志副知事は会議後の取材で「真摯(しんし)に回答をいただいた」とJRの対応を評価した。県は県境から山梨県側に300メートルの区間をボーリングする前に流出量返水について合意するようJRに求めている。森副知事は合意に向け「一歩前進した」と述べ、水の戻し方や戻す時期について協議を続けるとした。JRは丸井敦尚委員=地下水学、産業技術総合研究所招聘(しょうへい)研究員=が前回の専門部会で示した方法に基づき提案した。丸井委員も「おおむねこれで(ボーリング湧水に含まれる)静岡県の地下水の割合が計算できる」と評した。
 JRの検討案は、静岡県内で過去に採取した工事箇所付近の地下水と、これから削孔(さっこう)する県境300メートル区間のボーリング湧水の成分を比較する。ボーリングを行う地層の透水係数(水の通しやすさ)や、湧水の温度、電気伝導度の変化も踏まえ、静岡県内から流入してきた地下水の割合を推定する。JRの担当者はデータの評価については専門部会委員の判断を仰ぐとした。
 加えてJRの担当者は、山梨県の長崎幸太郎知事がこの問題を巡る静岡県の姿勢に疑問を呈していることを念頭に、静岡県に水を戻すには山梨県の合意も必要だとの認識を示した。(政治部・尾原崇也・大沼雄大)

ボーリングによる大量湧水 委員の意見分かれる
 県庁で7日に開かれた県の地質構造・水資源専門部会では、県境300メートル区間で実施する高速長尺先進ボーリングが、静岡県内の水資源に影響を及ぼすような大量湧水につながるかを巡って委員の意見が分かれた。
 静岡県は、JRが作成した地質調査資料で山梨県側と静岡県側の断層帯がつながっているように見えると指摘。断層帯を通じて静岡県内の地下水が流出し、大井川の水資源や生態系に影響を及ぼす事態になることを懸念している。
 大石哲委員(神戸大教授)は「自分なりに検討したが、大量湧水に至ることはなくコントロールできる」と述べた。丸井敦尚委員は部会後の取材で「静岡県の懸念は理解している」と述べつつ、「大量に水が出るとは思っていない」との見解を示した。
 一方、森下祐一部会長(静岡大客員教授)は「断層がつながっているとすると(山梨県の断層帯削孔時に)高圧水が出てくる」と県の考えに同調。塩坂邦雄委員(地質専門家)も「(山梨県の)断層の背後に(突発湧水につながる)被圧地下水がたまっている」として、JRに透水係数を調べるための湧水圧試験の実施を改めて求めた。

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