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国の新幹線停車増試算「あり得る範囲」 JR東海社長、知事見解に反論【大井川とリニア】

 JR東海の丹羽俊介社長は30日、名古屋市で開いた定例記者会見で、国土交通省によるリニア中央新幹線開業後の県内の東海道新幹線停車本数調査について「違和感はない。あり得る範囲」との認識を示した。同省の調査を巡っては、県内6駅に停車する列車本数を約1・5倍に増やせるとした予測を川勝平太知事が「仮定を言っているだけ。内容がお粗末」などと批判したが、実際にダイヤを決めるJRが調査の実現性に一定の担保をした格好だ。

記者会見する丹羽俊介JR東海社長=30日午後、名古屋市
記者会見する丹羽俊介JR東海社長=30日午後、名古屋市

 丹羽社長は「具体的な(東海道新幹線の)ダイヤは将来決める」としつつ、同省が示した県内駅の停車回数の想定を「数字の違和感はない」と述べた。その上で、「静岡県の皆さんにリニアのメリットを実感してもらうことが大切。調査結果を参考に、静岡県の利便性が向上するダイヤを決めていく」と強調した。
 同省は20日、リニアが品川―大阪間で全線開業した場合、東海道新幹線の県内6駅に停車する列車本数を現状の約1・5倍に増やせる可能性があり、10年間で1679億円の経済効果が生まれるとの調査結果を公表した。川勝知事は23日の定例記者会見で「この計算は小学生でもできる」などと述べ、実現性を疑問視していた。

田代ダム案実現に意欲も「着工めど立たず」
 丹羽社長は、リニア中央新幹線トンネル工事湧水の県外流出対策「田代ダム取水抑制案」の具体案を大井川流域市町などに示したことに関連し、「(ダムを管理する)東京電力リニューアブルパワー(東電RP)と詰めの協議を進める」と述べ、案の早期実現に意欲を示した。一方で、同案の実施をもって「(リニア県内工区)着工のめどが立つわけではない」との認識も示し、県との間で引き続き、リニア工事が南アルプスの自然環境に与える影響などの議論を進めるとした。
 JRは、東電RPと合意に至った同案の具体的な実施方法を流域市町などに個別に説明した上で、県に25日、流域市町や県などで構成する大井川利水関係協議会の正式な了解を得ることを求める文書を送った。
 具体案では、取水抑制の影響で発電所を安定して運転できる流量を確保できなくなる場合、東電RPが大井川の取水を完全に取りやめ、発電所を停止するとの方針を盛り込んだ。丹羽社長は会見で、国土交通省が以前に示した同案の河川法上の解釈を引用し、この場合でも水利権の目的外使用や譲渡に当たらず、法的な問題は生じないとの考えを述べた。
 丹羽社長は、同案の実現が県内工区着手に向けて県の理解を得るための「大きなテーマ」との認識を示しつつ、自然環境への影響や残土置き場の安全性についても県が懸念を示しているとし、「しっかりと説明していく」とした。
 (政治部・尾原崇也)

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