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リニア国交省会議 静岡県と最後まで擦れ違い 環境影響議論 県会議で継続へ

 リニア中央新幹線トンネル工事に伴う南アルプスの自然環境への影響を議論する国土交通省専門家会議は7日、計14回の協議を終え、JR東海への提言内容を盛り込んだ報告書を近く取りまとめることになった。生態系への影響や対策を巡り、静岡県が国会議の役割としてJRへの具体的な指導を求めていたのに対し、国会議の議論は環境保全の「大きな方向性をまとめた」(村田茂樹同省鉄道局長)ことにとどまり、県と国会議の考え方は最後まで擦れ違ったままだった。
国土交通省専門家会議の委員の主な意見
 「県が持つ疑問、課題がまだ解決されていない」。会議にオブザーバー参加した森貴志副知事は、1日に国に送付した意見書が報告書案の内容に十分に反映されていないとして議論の継続を求めた。しかし、中村太士座長(北海道大教授、生態系管理学)は県の意見に理解を示しつつも「(後は)県の専門部会で建設的な議論をしてほしい」と述べ、国会議として議論を終える方針を変えなかった。
国の専門家会議終了後、取材に応じる森貴志副知事(左)=7日午後、東京都内
 報告書案は、生態系への具体的な影響や対策に踏み込まず、今後のJRと県、静岡市などの協議に委ねるとした記述が目立つ。森副知事は「これで(議論が)県に戻ってきても、かえって工事まで時間がかかる」と懸念を示した。
 議論の方向性の違いから十分に扱われなかったものの、県の意見書は国会議の委員から「論破できない優れた意見」(竹門康弘大阪公立大客員研究員)と一定の評価を受けた。意見書に記された沢の水生生物への影響予測や高標高部の植生などの課題は引き続き、県有識者会議に舞台を移して議論することになる。
国専門家会議終了後に取材に応じるJR東海の宇野護副社長(左)=7日午後、東京都内
 JRの宇野護副社長は会議後の取材で、一連の国による議論を「充実した会議だった」と評価する一方、「県の懸念は残っている。これからがある意味(議論の)本番だと思っている」と述べた。
 国会議による報告書は、2021年12月に公表された大井川の水問題に関する報告書に次ぐ。
 (政治部・尾原崇也、東京支社・山下奈津美)

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