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南アルプス環境調査 希少植物移植「難易度高い」 静岡市長 代償措置に慎重【大井川とリニア】

 静岡市の難波喬司市長は22日、リニア中央新幹線トンネル工事の影響が懸念される南アルプスの動植物環境調査の結果、調査対象とした希少植物の9割以上で移植の長期的な根付かせが難しいことが確認されたとし、「代償措置として移植・播種(はしゅ)に頼るのは慎重にならざるを得ない」との見解を示した。市役所静岡庁舎で開いた定例記者会見で質問に答えた。

リニア工事の環境保全措置について見解を述べる静岡市の難波市長=市役所静岡庁舎
リニア工事の環境保全措置について見解を述べる静岡市の難波市長=市役所静岡庁舎


 市は2022年度に実施した調査で、JR東海が工事実施前の環境保全措置として、改変想定地域から別の南アルプスユネスコエコパーク区域内に17、18年度に移植・播種した希少種15種の生育状況を調べた。ホソバハナウドやタチキランソウなど5種は個体が確認できず、ミヤマスミレ、トダイアカバナなど9種は19~21年度調査時と比較し、生育が確認された個体数が減少していた。良好な生育状況を維持していたのはヒトツバテンナンショウ1種だけだった。
 難波市長は会見で調査結果を説明した上で「長期的な根付かせは、多くの種で非常に難易度が高いと分かった。重く受け止めざるを得ない」と述べた。
 リニア工事に伴う環境保全措置の在り方について議論してきた国土交通省専門家会議が7日に示した最終的な報告書案では、影響の回避・低減措置を講じても生態系に影響が生じる場合の代償措置について、JRが県や静岡市と具体的な内容を検討し、実施するよう求めている。市長は「(工事の影響で)減少した生育範囲をどう補うのか、市の協議会でJRとしっかり議論していく必要がある」と強調した。
 加えて難波市長は、報告書案の内容について「一部不十分なところがあるのは事実だが、精緻な議論がされ、環境影響評価の知見が高まった」と評価した。報告書案を参考に、市としても環境保全措置に関する見解をまとめるとした。
 (政治部・尾原崇也)

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