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リニア残土置き場協議 静岡市長、静岡県対応に疑問「河川管理者、リスク示せ」

 リニア中央新幹線トンネル工事に関する静岡市の事業影響評価協議会は6日、第12回会合を市役所静岡庁舎で開いた。難波喬司市長は残土置き場を巡るJR東海と県専門部会の協議に関し「(災害発生時の)環境保全措置をJR東海に求めるのであれば、まず河川管理者である県がリスクを具体的に示すべき」と述べ、県の対応に疑問を呈した。

リニア工事のうち残土置き場に関して静岡市の考えを説明する難波喬司市長(左から2人目)=6日午後、市役所静岡庁舎
リニア工事のうち残土置き場に関して静岡市の考えを説明する難波喬司市長(左から2人目)=6日午後、市役所静岡庁舎

 8月3日に県庁で開かれた県専門部会では、JRが大井川上流部の燕(つばくろ)沢付近に計画する残土置き場の安全性を協議した。JRが、盛り土の存在が土石流の規模を増長させたとしても、下流で最も近くにある椹島(さわらじま)ロッジ地点では盛り土がない状況と違いは見られないとのシミュレーション結果を示したのに対し、県や専門部会委員からは自然環境へ与える影響を問題視する意見が出て、議論は平行線に終わった。
 難波市長は議論の前提として「県が(災害発生)リスクを設定し、(盛り土がない)現時点でどう対処しているかを示すべき」と指摘した上で、「それを行うことなく(JRに)安全確保を求めているのであれば、妥当性に疑問がある」と述べた。どの程度の災害発生確率を想定するかについても、盛り土規制法の基準などを踏まえて「100年(に1度の発生確率)をとれば十分」とし、川勝平太知事が8月8日の記者会見で示した「千年に1回という規模で考えるべき」との見方に異論を唱えた。
 加えて難波市長は、残土置き場は燕沢に計画することを前提に議論し、影響評価は「椹島への影響を考えればいい」と述べ、県側の「自然環境への影響を考慮し、残土置き場は広く適地を検討すべき」との意見をけん制した。
 今後、市の見解を県とJRに伝えるという。
 明星大教授の長谷川裕彦委員(地理学)は過去の土砂崩れの痕跡から、深層崩壊した際の土砂量はJRが想定する85万立方メートルではなく、「千万立方メートルオーダー」の土砂崩れを想定すべきだと指摘した。
 協議会ではこのほか、国土交通省専門家会議での協議状況を共有し、JRが進める林道東俣線改良工事が自然環境に与える影響などについて意見交換した。
 (政治部・尾原崇也、池谷遥子)

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