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リニア工事環境評価巡るJRとの議論「課題解消17項目のみ」 静岡県が認識公表、30項目は未了

 森貴志副知事は5日、県庁で記者会見し、リニア中央新幹線トンネル工事の環境影響評価についてJR東海との議論の進捗(しんちょく)に関する県の認識を公表した。県が2019年9月に取りまとめた課題47項目のうち、必要な議論が終了したのはトンネル湧水の全量戻しに関する内容など全体の36%に相当する17項目にとどまるとし、水資源に関して残る9項目と、南アルプスの環境保全に関する全17項目、トンネル残土置き場に関する全4項目については今後も議論が必要と指摘した。

リニア工事に関するJR東海との議論の進捗について県の認識を説明する森貴志副知事=5日午後、県庁
リニア工事に関するJR東海との議論の進捗について県の認識を説明する森貴志副知事=5日午後、県庁
「47項目」も進捗状況の評価
「47項目」も進捗状況の評価
リニア工事に関するJR東海との議論の進捗について県の認識を説明する森貴志副知事=5日午後、県庁
「47項目」も進捗状況の評価


 国の専門家会議が23年12月に南アルプスの環境保全に関する報告書を取りまとめ、3年8カ月にわたった国の議論に区切りがついたため、県の認識を改めて整理した。森副知事は「議論がいつ収束するとは言えないが、スピード感を持って県専門部会を開催し、解決を図りたい」と述べた。
 大井川の水資源に関する課題26項目のうち、17項目で県側の疑問点が解消され、協議が終了したとの認識を示した。県が14年から求めている「トンネル湧水の全量戻し」については、JRが「田代ダム取水抑制案」を示し、ダム管理者と実施に向けて合意したことを受け、議論が進展したと評価した。一方で、ダム管理者との協議結果などが具体的に示されていないとして県有識者会議の専門部会でJRに確認を求めるとし、山梨県内のトンネル工事が静岡県の水資源に与える影響についても引き続き議論が必要と指摘した。
 南アルプスに関する議論は、JRの環境保全措置の進め方は適切とする国報告書が示されたことで、一定の進展が見られたと評価しつつ、工事に伴う生態系への影響の予測や評価、リスク管理について引き続き議論を要するとした。会見に同席した県の石川英寛政策推進担当部長は、影響が懸念される沢の上流部で生物調査が不足しているとし、「調査がないまま工事を始めたときに、取り返しのつかない(生物への影響)結果が出ることを危惧している」と述べた。
 県は残された課題について水資源のテーマは3区分、南アルプスは5区分、トンネル残土は1区分にそれぞれ整理した。
 (政治部・尾原崇也)

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