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JRと県 議論加速を 協議体設置など提案 国モニタリング会議 矢野座長インタビュー【大井川とリニア】

 静岡県内のリニア中央新幹線トンネル工事に伴い、国土交通省が新たに設置したモニタリング会議で座長を務める矢野弘典氏が6日、静岡市内でインタビューに応じた。環境保全措置に関するJR東海と県の議論について「前進はしているが、解決には至っていない」と述べ、モニタリング会議の議論を進める前提として当事者間で合意する必要性に言及した。両者の議論を加速させるために新たな協議体の設置を提案し、期限を区切った上での議論もあり得るとした。=関連記事5面へ

矢野弘典座長
矢野弘典座長


 国交省は大井川の水資源確保と、南アルプスの環境保全に関する専門家会議を開催し、2023年12月までに二つの報告書をまとめた。これをもって、県が提起した課題はすべて対策を示したとの立場で、モニタリング会議は、JRが取り組む環境保全対策の実施状況を確認する目的で設置し、初会議を2月29日に開いた。
 矢野座長はモニタリング会議の役割として、掘削工事が始まってからの環境変化の監視と、影響が生じた場合の対応の協議が最も重要との認識を示した。その上で、「(課題は)まだ全部は解決されていないし、当事者間で認識の差の解消が先決だ」と述べ、JRと県の協議が継続している段階では「常識的に考えて事業が進まない」と指摘した。
 JRと県の協議を進める方策は当事者の判断に委ねるとしつつ、県とJRの双方の代表者による新たな協議体を設立し、そこに国交省が関与するやり方もあると提案した。議論の期間は「延々と議論していたら事業が進まない。ある程度、当事者同士でいつまでに答えを出しましょうねと合意ができたら素晴らしい」と、期間を区切って議論することが望ましいとした。
 モニタリング会議は、JRと県の協議の経過について報告を受けることで進展を促すとしつつ、「当事者の自主性を重んじないと解決しない」と、あくまで当事者間で合意することが重要だと強調した。JRと県の議論はかみ合わないことが目立つが、「徹底的に話し合えば、どこかに接点があるはずだ」と展望した。
 環境への影響予測の考え方として、中日本高速道路会長時代に最大土かぶり(トンネルの深さ)千メートル以上の東海北陸自動車道飛騨トンネルの難工事などに関わった経験から、「最善を尽くしても想定外は起こる」と指摘。「想定内の範囲を広げることで想定外の出来事に対処が集中できる。平素から想定内を増やす努力をすることが事業者の一番大事な姿勢だ」とJRに注文を付けた。
 (政治部・尾原崇也)

 やの・ひろのり 1963年東芝入社。国際畑を歩み、同社欧州総代表、ヨーロッパ社長を務めた。退職後、経団連専務理事、横綱審議委員長、中日本高速道路会長などを歴任。2005年から産業雇用安定センター会長、11年からふじのくにづくり支援センター理事長。東京大法学部卒。83歳。東京都出身、在住。

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