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静岡の地下水流出 「量は推定できる」 山梨県内ボーリング

 リニア中央新幹線トンネル工事の大井川減水問題を協議する静岡県有識者会議地質構造・水資源専門部会の丸井敦尚委員(65)=地下水学、産業技術総合研究所招聘(しょうへい)研究員=が2日までに茨城県つくば市の同研究所で取材に応じた。同工事のうち、山梨県内の高速長尺先進ボーリングで静岡県の地下水が山梨県側に流出するかを巡って静岡県とJR東海の見解が分かれている問題で、丸井委員は「県境まで掘れば、湧水に静岡県の水が絶対に紛れ込んでいる」との認識を示した上で、静岡県の地下水流出量を計測する方法はあると説明した。

丸井委員が示す山梨県内の高速長尺先進ボーリング湧水の中に静岡県の地下水が含まれる割合を推定する方法
丸井委員が示す山梨県内の高速長尺先進ボーリング湧水の中に静岡県の地下水が含まれる割合を推定する方法
取材に応じる県専門部会委員の丸井敦尚氏=5月下旬、茨城県つくば市の産業技術総合研究所
取材に応じる県専門部会委員の丸井敦尚氏=5月下旬、茨城県つくば市の産業技術総合研究所
丸井委員が示す山梨県内の高速長尺先進ボーリング湧水の中に静岡県の地下水が含まれる割合を推定する方法
取材に応じる県専門部会委員の丸井敦尚氏=5月下旬、茨城県つくば市の産業技術総合研究所


静岡県有識者会議・丸井委員 計測案を提示  丸井委員は4月に開催した専門部会で考えの一端を示し、県、JRとも関心を示している。6月7日に開催予定の次回部会で具体的に協議するとみられる。
 丸井委員は、JRがこれまでに提出した地質調査資料などを踏まえ、静岡県内と山梨県内で地層の堆積時期が異なり、蓄えている地下水の成分や年代にも違いがある可能性が高いことに注目。山梨県内のボーリングで発生する湧水の水温や成分、年代の変化を定期的に調べ、JRが過去に静岡県内で実施したボーリング湧水の温度や水素イオン指数と比較することで、「例えば1トンの湧水のうち、300キロが静岡のものだということが科学的に言えるようになる」と説明した。
 先進ボーリングを通じて地層の透水係数(水の通しやすさ)や間隙(かんげき)率(地層内に水が入り込む隙間の割合)も調べ、削孔(さっこう)で生じる穴の周辺からどの程度の範囲の地下水を引っ張っているかを推定することで「静岡県から流入してくる水量を推定するシミュレーションが高度化する」と指摘。加えて、「県境を越えて静岡県内までボーリングを行い、実際のデータをとれば、より正確に静岡県への返水量が算定できる」と述べた。
 静岡県は県境付近をボーリングすると、削孔地点が山梨県内であっても静岡県内の地下水が引っ張られる形で流出する可能性に懸念を示している。水の戻し方について合意するまで山梨県側の県境300メートル区間を削孔しないようJRに求めているが、同社は応じていない。丸井委員は、JRが示している突発湧水発生時の対応に加え、この計測方法の実施と返水方法についてJRと県が事前に合意することが、議論の落としどころになるとの見方を示した。


静岡県、JRに対応求める方針  静岡県は丸井委員が提示した方法について、山梨県内の高速長尺先進ボーリング湧水に静岡県の地下水が含まれる可能性があるとの主張を裏付ける根拠になるとみて、JRに対応を求める考え。ただ、県境を越えて静岡県内でのボーリングを実施した上で流出量を推定する方法については「静岡県内削孔時のボーリング湧水の戻し方がまだ決まっていない」(担当者)として否定的な見方を示した。
 JRの担当者は4月の専門部会で、丸井委員の提案に一定の理解を示したものの、過去に静岡県から移動して山梨県内に長くとどまっている地下水が「静岡県内の地下水」と推定される可能性に懸念を示し、「認識のすり合わせが必要」とした。
 同社は山梨県側の県境300メートル区間のボーリングについて、10メートルあたり毎秒50リットルの湧水量が1週間程度出続けた場合は中止し、止水するとの対応を表明。その状況以外では、工事の安全上の観点からボーリング終了後を含めて湧水を流し続けるとしている。

 

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