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【ウクライナ侵攻】AIドローン、急速発展 「第3の革命」人間介さず

 24日で開始から2年となるロシアのウクライナ侵攻では、多種多様な無人機(ドローン)が前線や遠隔地攻撃に大量投入されている。防御側の電波妨害(ジャミング)や操作ミスを避けるため、人間を介さず自律的に標的を攻撃する人工知能(AI)搭載ドローンの開発が急速に進む。ウクライナは無人機部隊の創設を決定。火薬、核兵器に続く「第3の軍事革命」と言われるAI兵器の登場は戦争を変容させた。

共同通信と会見するウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル転換相=2023年12月、キーウ(共同)
共同通信と会見するウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル転換相=2023年12月、キーウ(共同)
ドローン製造企業「ツイスト・ロボティクス」の拠点で作業する従業員ら=2023年12月、ウクライナ西部リビウ(共同、画像の一部を加工しています)
ドローン製造企業「ツイスト・ロボティクス」の拠点で作業する従業員ら=2023年12月、ウクライナ西部リビウ(共同、画像の一部を加工しています)
ウクライナ・リビウ、キーウ、ロシア
ウクライナ・リビウ、キーウ、ロシア
共同通信と会見するウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル転換相=2023年12月、キーウ(共同)
ドローン製造企業「ツイスト・ロボティクス」の拠点で作業する従業員ら=2023年12月、ウクライナ西部リビウ(共同、画像の一部を加工しています)
ウクライナ・リビウ、キーウ、ロシア

 ウクライナ西部リビウ市街地のありふれた建物は、道路に面した窓ガラスが目張りされて中をのぞき込めなくなっていた。内部は吹き抜けの空間が広がり、工具を手にした若い男女が作業に没頭する。ドローン製造企業「ツイスト・ロボティクス」の拠点だ。
 同社幹部はロシアによる空爆を警戒し、周辺や作業員の顔を撮影しないよう記者に念押しした。同社は製造だけでなく新型機の開発にも取り組み、最も力を注ぐのがAI搭載の自律型の攻撃ドローンだ。
 一人称視点(FPV)型と呼ばれるタイプのドローンは通常、本体に装着されたカメラから電送されてくる戦場の映像を、人間がゴーグル型の端末やパソコンの画像で確認しながら操作して攻撃する。同社は人間が標的を設定し、標的の発見後はAIが追跡して攻撃するドローンを開発する。
 ジャミングの影響を受けない上、地形により電波が届かない場所を飛行しても確実に標的を捉えることが可能になる。既に試作機を前線に投じ、月に千機を製造するのが目標。将来的には標的設定もAIに任せるタイプの開発を視野に入れる。
 部品の99%が中国の民生品を転用しているといい、調達は容易だ。製造コストは1機400~500ドル(約6万~約7万5千円)。従来の地上戦で主役だった戦車などが格安のドローンで次々と破壊されており、ドローンはウクライナ侵攻で主力兵器となった。
 AIが自動的に標的を識別して破壊、殺傷する兵器は「自律型AI兵器」と呼ばれている。開発や使用を規制する国際的なルール作りは進んでいない。同社幹部は「ロシアもAIを活用したドローン開発を加速させている。後れを取れば敗北する。やめるわけにはいかない」と訴えた。
 フェドロフ副首相兼デジタル転換相によると、ドローン開発促進のため、政府は規制緩和や減税措置を導入。現在、国内外の約200社が戦場に投入する無人機の開発でしのぎを削っている。
 フェドロフ氏は共同通信の取材に「ドローンは戦場の在り方を転換し、新しい概念をもたらした。AIで兵器を高度化し、戦争勝利を目指すのは当然だ」と明言した。(キーウ、リビウ共同=小玉原一郎)

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