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神戸8人死傷集合住宅火災 生活困窮者の「頼みの綱」 狭い居室、防火に課題【大型サイド】

 22日の火災で8人が死傷した神戸市の集合住宅は、生活保護を受給する高齢者が多く身を寄せていた。保証人不要で家賃も安い物件は生活困窮者の「頼みの綱」だが、運営費用を抑えるため狭い居室が密集し、防火対策が不十分との指摘もある。過去に同様の建物で多くの人が犠牲になった。有識者は、生活困窮者の住宅問題は民間任せで、行政の取り組みが進んでいないと批判する。

火災があった神戸市兵庫区の集合住宅=22日午前4時24分
火災があった神戸市兵庫区の集合住宅=22日午前4時24分
火災があった神戸市兵庫区の集合住宅=22日午前5時29分
火災があった神戸市兵庫区の集合住宅=22日午前5時29分
2017年5月に北九州市で起きたアパートの火災現場
2017年5月に北九州市で起きたアパートの火災現場
2015年5月に川崎市で起きた簡易宿泊所の火災現場
2015年5月に川崎市で起きた簡易宿泊所の火災現場
火災があった神戸市兵庫区の集合住宅=22日午前4時24分
火災があった神戸市兵庫区の集合住宅=22日午前5時29分
2017年5月に北九州市で起きたアパートの火災現場
2015年5月に川崎市で起きた簡易宿泊所の火災現場

 兵庫県警や入居者などによると、現場は1963年築の3階建てで、各フロア約100平方メートル。計31の居室が並び、いずれも3、4畳の「一人寝たらいっぱいの広さ」(入居者)。火災報知機や消火器は設置されていたが、スプリンクラーの設置義務はなく、実際に導入されていなかった。足が不自由な人や要介護者もおり、焼け跡からは車いすが見つかった。
 生活困窮者が暮らす共同住宅や施設ではこれまでにも火災が発生し、多くの犠牲者を出した。そのたびに指摘されてきたのが、防火対策の不備と、同じフロアに小さな部屋が密集して並ぶ独特の建物構造だ。
 2017年に北九州市で6人が死亡したアパートも身分確認や保証人が不要で、住人の多くが生活困窮者。防火設備の関係書類は消防に未提出で、定期的な立ち入り検査も受けていなかった。
 11人が犠牲になった15年の川崎市の簡易宿泊所火災では、廊下の両側に3畳ほどの部屋が並ぶ構造で「木造2階建て」と行政に届けながら事実上3階建てになっていた。
 それでも、今回の神戸市の火災で取材に応じた住人の男性は「家賃は光熱費込みで4万3千円。狭いが、テレビや冷蔵庫も備え付けでありがたい」と好意的だ。入居者を紹介してきたNPO法人「神戸の冬を支える会」の觜本郁理事(69)は「住人のほとんどが生活困窮者。設備は最低限だが、すぐに受け入れてくれる。重要なセーフティーネットだ」と強調する。
 同じく紹介してきた支援団体「カトリック社会活動神戸センター」も、今回の集合住宅は入居者の生活保護受給が始まるまで運営会社が家賃の支払いを待ってくれたと明かす。
 一方で、貧困問題に取り組むNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長(35)は、行政が生活困窮者の住宅問題を民間任せにしている点が問題だと訴える。身寄りがない生活困窮者が快適で安全な住まいを確保するのは難しく、全国で問題になっているためだ。
 大西氏は、自治体のケースワーカーが生活困窮者を訪問する頻度が新型コロナウイルス禍で低くなっている可能性もあるとした上で「まずは行政が住環境の実態を把握し、公営住宅など、より良い物件に住めるよう努めるべきだ」と話した。

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