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中国、61年ぶり人口減 出産奨励、響かぬ若者 活力喪失、世界の不安要因【表層深層】

 中国が、少子化に起因する人口減時代に突入した。国力向上にまい進する習近平指導部は出産奨励に躍起だが、多様な価値観を受け入れる若い世代には響かない。長年続いた「一人っ子政策」の後遺症も深刻で、国連は2100年に人口はほぼ半減の7億人台になると予測。豊富な労働力で急成長を遂げた中国は人口減で活力を失いつつあり、世界経済は新たな不安要因を抱え込んだ。

北京市内の繁華街を歩く人たち=17日(共同)
北京市内の繁華街を歩く人たち=17日(共同)
北京市内の繁華街で遊ぶ子どもたち=17日(共同)
北京市内の繁華街で遊ぶ子どもたち=17日(共同)
北京市内を歩く子どもたち=17日(共同)
北京市内を歩く子どもたち=17日(共同)
中国の人口
中国の人口
北京市内の繁華街を歩く人たち=17日(共同)
北京市内の繁華街で遊ぶ子どもたち=17日(共同)
北京市内を歩く子どもたち=17日(共同)
中国の人口


結婚観「指導」
 第3子養育中の住宅購入に報奨金3万元(約57万円)。第2子の出産に2千元、第3子に5千元を支給―。地方政府は最近、出産と育児をしやすい環境づくりに注力。補助金をばらまき、産休、育休の期間延長といった支援策を次々打ち出す。
 一連の動きは習指導部の危機感の裏返しだ。人口減少を国家の安定を揺るがす重要課題と受け止め、共産党は2021年の会議で「結婚適齢期の若者に対し、結婚観への教育指導を強化しなければならない」と訴えた。
 一人っ子政策の一環として導入された「産み過ぎ」への罰金や不妊手術の推奨をやめ、出産を促す方針に転換した。

母胎ソロ
 だが、若者らの反応は鈍い。中国で13年に結婚したカップルは1347万組いたが、21年には764万組に激減した。
 北京で働く湖北省出身の女性(22)に結婚や出産の願望はない。封建的な家庭で子どもを抑圧する両親に育てられた。「好きな人といるのに婚姻は不要だ」。新型コロナウイルス対策で個人の権利が著しく制限された経験から「子どもは欲しくても中国では産みたくない人が増えた」と話す。
 「僕は『母胎ソロ』」。医療機器会社で働く男性(28)はさばさばと話す。母親のおなかの中からずっと1人(ソロ)ということから、交際経験が一度もない人を指す流行語。親族に勧められ見合いを4、5回したが交際には至らなかった。それでも焦りはない。
 教育費の高騰や保育所の不足などに加え、将来不安も子づくりをためらわせる。国有企業の男性会社員☆(刑のリットウが郊のツクリ)さん(34)は、無気力な「寝そべり族」の典型。出世欲も物欲も薄く、趣味のゲームで独身生活を満喫する。子どもを持ったとしても、その子は経済低迷で不安定な暮らししか望めないだろうと悲観する。
 一人っ子政策の影響で男女比がいびつになっている事情も。男性の人口は約7億2千万、女性は約6億9千万。男性が結婚を望んでも、相手がいない問題が指摘される。

同じ道
 丸紅中国法人の鈴木貴元・経済調査総監は「政府が(結婚・出産の)旗を振っても誰も振り向いていない。出産を宣伝するほど女性の反感も強い」と分析。「大卒を1千万人輩出できる時代は30年代半ばに完全に終わり、活力が大きく低下していく」と見通す。
 人口は中国の競争力の源泉だ。大規模な労働市場は「成長の原動力」(日本の機械メーカー幹部)となり、中国を「世界の工場」に押し上げた。
 人口減はこの勢いをそぐ。生産を支え、消費が旺盛な若い世代が減り、高齢者が増え社会保障負担が重くなる―。長期の低成長に苦悩する日本がたどってきた道だ。
 日本国際問題研究所の津上俊哉客員研究員は「中国は日本と同じ道を歩んでいる。一人っ子政策があったことで、日本よりも経済縮小の圧力は強い」と指摘。「人口減少が激しい東北3省などでは、日本のように『限界集落』が増えるだろう」と予想した。(北京共同=鮎川佳苗、野崎亮)

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