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小惑星の謎、放射光で解明 水や有機物の存在明らかに はやぶさ2採取のかけら

 探査機はやぶさ2が2020年に持ち帰った小惑星りゅうぐうの試料の分析が進んで、大きな発見の報告が相次いでいる。水や有機物など、生命の誕生につながる物質が小惑星にあると確かめられた。特に水は液体で存在していると分かり、話題となった。極小の試料に秘められた謎を解き明かしたのは大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)だった。立命館大などのチームが分析する現場を訪れ、発見の裏側に迫った。

スプリング8で分析した小惑星りゅうぐうの試料のデータを見る土山明立命館大教授(中央)ら=2022年10月、兵庫県佐用町
スプリング8で分析した小惑星りゅうぐうの試料のデータを見る土山明立命館大教授(中央)ら=2022年10月、兵庫県佐用町
小惑星りゅうぐうの試料を分析した大型放射光施設スプリング8=2022年10月、兵庫県佐用町
小惑星りゅうぐうの試料を分析した大型放射光施設スプリング8=2022年10月、兵庫県佐用町
スプリング8の施設内に立つ土山明立命館大教授=2022年10月、兵庫県佐用町
スプリング8の施設内に立つ土山明立命館大教授=2022年10月、兵庫県佐用町
スプリング8で分析した小惑星りゅうぐうの試料のデータを見る土山明立命館大教授(中央)ら=2022年10月、兵庫県佐用町
小惑星りゅうぐうの試料を分析した大型放射光施設スプリング8=2022年10月、兵庫県佐用町
スプリング8の施設内に立つ土山明立命館大教授=2022年10月、兵庫県佐用町


エックス線CT
 地球と火星の間を回るりゅうぐうには太陽系ができたころの痕跡が残るとされる。はやぶさ2は貴重な岩石のかけら計5・4グラムを持ち帰った。
 分析の最大の狙いは、生命に欠かせないアミノ酸と水。水は、これまでの分析でも痕跡が確認されていたが、液体で存在するのかどうかが関心の的だった。これに迫ったのが土山明立命館大教授らのチームだ。
 大きさが1ミリにも満たないものもあるりゅうぐうの試料。これを分析したスプリング8は、広大な敷地に直径約500メートル、1周約1・5キロの巨大な円形の装置を備える。「施設内は自転車で移動することもあります」(土山さん)。非常に強力な光を当てると、物質の構造が原子や分子レベルまで見えてくるのだ。貴重な試料には傷一つ付けない。
 スプリング8にあるさまざまな装置のうち、今回用いたのはエックス線CT。水の分析に使った装置では、1千万分の1メートル単位で見分ける能力を持つ。
 「まず3次元の構造を調べ、どこに面白そうなものが潜んでいるのかを見つけます」と土山さん。台に試料を載せて回転させながらビームを照射した。30分ほどかけて撮影し、内部の構造を分析すると磁硫鉄鉱という鉱物の結晶内に液体があることが分かった。
 結晶部分は切り出して米航空宇宙局(NASA)で分析してもらう。この液体を凍らせて化学分析すると、水に間違いないことが判明した。

密度
 チームは現在、精度はやや低いがより広い領域を観察できる装置での分析も進めている。全体の構造を把握するためだが、とりわけ試料の密度に注目している。
 土山さんによれば、物質の密度が分かれば天体のでき方やその後の進化をある程度知ることができる。密度を調べるには重さと体積を計測しなければならないが、微小な試料の体積は通常の手法では難しい。だが放射光を使えば画像から体積を求めることができる。比較的大きな試料ならば重さを量れるため、正確な密度が分かるという。
 りゅうぐうの水は炭酸泉のように二酸化炭素(CO2)を含んでいることから温泉にも例えられているが、天体の中でかつてどのような形で存在していたのかが今後の注目点だ。さらに米国が別の小惑星から回収した試料についても、スプリング8で水の有無や性質などを分析する可能性がある。土山さんは「他天体の水に関する研究にもつなげていきたい」と意気込んでいる。

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