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東南アジア、半導体要衝に 米中対立避けた投資も

 東南アジアのマレーシアやシンガポールが半導体供給網の要衝の地位を固めている。米中対立の影響を避けるため、外資系企業の投資が増加。米国が主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF)に参加する一方で、中国との関係も維持する。対立のはざまで存在感を増している。

取材に応じるグローブトロニクス・テクノロジーのヘン・チャルンイーCEO(共同)
取材に応じるグローブトロニクス・テクノロジーのヘン・チャルンイーCEO(共同)
シンガポール北部で拡張工事が行われている米グローバルファウンドリーズの生産拠点(共同)
シンガポール北部で拡張工事が行われている米グローバルファウンドリーズの生産拠点(共同)
マレーシア・クアラルンプール、ペナン州、シンガポール
マレーシア・クアラルンプール、ペナン州、シンガポール
取材に応じるグローブトロニクス・テクノロジーのヘン・チャルンイーCEO(共同)
シンガポール北部で拡張工事が行われている米グローバルファウンドリーズの生産拠点(共同)
マレーシア・クアラルンプール、ペナン州、シンガポール


地の利
 「米中対立で(欧米企業の投資が増え)マレーシアはとても有利な場所になった」。地場の半導体関連企業グローブトロニクス・テクノロジーのヘン・チャルンイー最高経営責任者(CEO)は語る。米大手の半導体製造の後工程を担い成長。「いずれ巨大消費地となるインドに近い」と、将来性の大きさも挙げる。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、半導体輸出はシンガポールが世界4位、マレーシアは6位と、7位の米国、8位の日本をしのぐ。 
 シンガポールは半導体や電子部品で「決定的に重要なグローバルの(供給網の)結節点」(経済開発委員会)。米グローバルファウンドリーズや台湾の聯華電子(UMC)が大型投資計画を公表済みだ。
 マレーシアはシンガポールより工場の運営コストを抑えられるとして、1970年代から北西部ペナン州を中心に半導体産業が発展。300社以上の多国籍企業と、それを支える3千社の中小企業がある。日米欧企業の下請けから始まったが、設計など高度な分野に進出する地場企業も出てきた。
 州首相顧問のリー・カーチュン氏は「50年続いた投資で優秀な人材が育ったのが強み」と指摘。新型コロナウイルス禍でも米インテルやドイツのボッシュによる大型投資計画が明らかになったほか、台湾の鴻海精密工業も電気自動車(EV)用の半導体製造を新たに検討する。

断絶難しく
 課題もある。投資を拡大する企業が増え、人手不足が深刻化。最近は国境を越えた人材獲得競争も激化し、リー氏は「優秀な技術者が引き抜かれてしまう」とこぼす。
 短期的には米中対立で恩恵を受けるものの、影響は見通せない。米国は最先端半導体の対中輸出規制を強化し、IPEF参加国による囲い込みも進めている。
 マレーシア半導体産業協会のウォン・シューハイ代表は「半導体の供給網は50カ国以上が関わり、複雑に絡み合っている」と指摘。米国のレモンド商務長官に中国との関係を断ち切るのは難しいと忠告したと明かした。(マレーシア北西部ジョージタウン共同=角田隆一)

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