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ロングトレイル普及に期待 自然道を「歩く旅」人気 健康志向背景、経済効果も

 全国各地で自然を楽しむために整備された長距離の歩道「ロングトレイル」の普及が進んでいる。近年の健康志向に伴い、幅広い年齢層で森林や原野などを「歩く旅」が人気になっていることが背景。普及を促進する協会に加盟するルートは29で、うち八つが整備・計画中。距離は数十キロ~千キロにも及び、人気になれば広域に経済効果をもたらすとの期待もある。

JR天北線の廃線跡に残る鉄橋=11月、北海道中頓別町
JR天北線の廃線跡に残る鉄橋=11月、北海道中頓別町
JR天北線の廃線跡を歩く参加者ら=11月、北海道中頓別町
JR天北線の廃線跡を歩く参加者ら=11月、北海道中頓別町
構想が進む「天北トレイル」を歩く参加者ら=11月、北海道中頓別町
構想が進む「天北トレイル」を歩く参加者ら=11月、北海道中頓別町
JR天北線の廃線跡に残る鉄橋=11月、北海道中頓別町
JR天北線の廃線跡を歩く参加者ら=11月、北海道中頓別町
構想が進む「天北トレイル」を歩く参加者ら=11月、北海道中頓別町

 11月中旬、北海道中頓別町で構想が進む「天北トレイル」の試歩会が行われた。1989年の廃線まで地域を支えたJR天北線が名前の由来だ。夕日が山々を染める中、約20人の参加者は牧草地帯に残る鉄橋や作業小屋などを巡る約2キロのコースを90分ほどで歩いた。
 ロングトレイルの定義は定まっていないが、40~50キロの長さと踏破に2~3日以上が必要というのが共通認識だ。歩きながら地域の風景や歴史を楽しめるのが魅力で、登山ほど険しい道を歩かないことから、高齢者にも受け入れられている。
 かつて中頓別町は林業や酪農で栄え、1920年のピーク時は人口が8300人を超えていたが、少子高齢化に伴い、今年は1600人を下回った。昔のにぎわいを取り戻そうと、目を付けたのが全国で注目が高まるロングトレイルだった。
 日本で初めて2005年に部分開通した長野県と新潟県を結ぶ「信越トレイル」(現在は全長110キロ)の場合、ブナの森やのどかな集落を巡るルートが人気で年間約1万人が訪れる。訪れた人が地元の宿や店を利用するだけでなく、移住してガイドになる人もいる。
 天北トレイルの整備を主導する地元観光団体は、開通すれば「日本最北のロングトレイル」をキャッチコピーに交流人口の創出につながると期待。廃線跡の約150キロを整備する計画で、5年後に町内約30キロのルートを通すのが目標だ。線路上に生い茂る高さ1メートルほどのクマザサを刈り取るなどの作業を進めている。
 天北線の遺構や開拓の歴史を後世に伝えることも狙いの一つ。19年に開通した青森、岩手、宮城、福島の4県を結ぶ「みちのく潮風トレイル」(全長1025キロ)は東日本大震災からの復興を目指し、環境省が整備した初のトレイル。海岸沿いの震災遺構を巡り、歴史の伝承に役立っている。
 ただ廃線から30年以上たつ天北線は跡地が民間などに払い下げられたほか、複数の自治体にまたがるため整備に地域の理解が欠かせない。発起人蓮尾純一さん(43)は「地元と信頼関係を築き、この地域を旅の目的地にしたい」と意気込む。
 ロングトレイルの専門家で北海道大観光学高等研究センターの木村宏教授は余暇の多様化に伴い、今後も広まっていくと指摘。「トレイル事業は複数の自治体が共通の課題に取り組むため、他の分野でも行政間の話し合いが円滑に進む契機になる」と期待を込めた。

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