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社説(6月2日) 知事選3日告示 危機克服の具体策示せ

 任期満了に伴う静岡県知事選はあす告示される。現職で4選を目指す川勝平太氏(72)と前参院議員の新人岩井茂樹氏(53)=自民党推薦=が共に無所属での出馬を表明し、一騎打ちとなる見通しだ。17日間の選挙戦に突入する。
 川勝氏は政党色を前面に出していないが、立憲民主、国民民主両党の県連が支援を決め、連合静岡が推薦した。共産党県委員会も自主的に支援する方針を表明した。自民党県連が擁立した岩井氏は、知事選では川勝氏が初当選した2009年以来となる党推薦を得て結束を図る。与野党対決の構図が鮮明になり、激しい選挙戦が予想される。
 国政では、新型コロナウイルス対策などを巡り、野党が菅義偉政権への攻勢を強めている。野党側は遅くとも秋までに行われる衆院選を見据え、知事選に勝利して弾みをつけたい考えだ。一方の自民も4月の衆参補欠選挙と参院再選挙で全敗した流れを断ち切って衆院選に臨むため、負けられない選挙になる。
 新型コロナ感染拡大の収束が見通せず、県民生活への影響が長期化する中、人口減少や打撃を受けた経済の回復、リニア中央新幹線トンネル工事に伴う大井川の流量減少問題など重い課題が山積している。この難局をどう乗り切り「コロナ後」の反転攻勢につなげるか。両氏は選挙戦を通じて主張を具体的に説明し、県民に信を問わなければならない。
 新型コロナ対策を巡っては、これまで何とか新規感染者数を抑えて医療崩壊を防いできたが、感染力の強い変異株が広がりつつあり、感染対策とワクチン接種の加速化が求められている。現状では本県の高齢者へのワクチン接種率は全国都道府県の下位に甘んじている。市町をどうサポートし、国に何を求めるか。切迫した状況だけに、より突っ込んだ議論をして早急な支援強化につなげたい。
 東京五輪・パラリンピックは、自転車競技開催県としてボランティア確保などを含めた万全の準備が必要だ。ただ、5月の共同通信の全国世論調査では、6割近くが大会を中止すべきだとした。今後の感染状況や世論の動向によっては本県も難しい立場になる可能性がある。知事には県民代表として的確な判断と発言が求められよう。
 経済政策では、新型コロナで打撃を受けている産業や企業・事業者の支援充実、雇用維持が喫緊の課題だ。併せて収束後の経済活性化や産業振興に向けた中長期的なビジョンも問われる。輸送用機器などの製造業を基幹産業とする本県は、世界的なEV(電気自動車)化の影響をもろに受ける。産業構造の転換を進めるための議論を深めなければならない。
 本県を象徴する茶産業も担い手の高齢化や価格低迷で全国一の産地の座が危うくなっている。再生の方策について論戦を求めたい。
 リニア水問題について、これまでの両氏の発言内容を見る限り、大井川流域の意向を尊重し、JR東海に一層の対応を求める姿勢は共通している。選挙戦ではさらに、問題解決への道筋をどう考えているか語ってほしい。そうすることで両氏の主張の違いが有権者に見えてくるはずだ。
 県が毎月発表している本県の推計人口で、35年ぶりに360万人を割る可能性が高まっている。07年12月に379万人余りを記録したのをピークに、以降は減少が続く。東京一極集中による人口流出と少子高齢化に、有効な手だてを打てていない。人口流出に歯止めをかけるには、コロナ禍で高まったリモートワークや地方移住への関心を取り込むアイデアが不可欠だ。
 コロナ下の選挙で、有権者は情報入手や投票に不便を強いられるが、危機の克服とその後にやって来る回復期を担うリーダーを選ぶための重要な選挙だ。万難を排して一票を投じたい。

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