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【核のごみ文献調査終了へ】選定次段階へ、続く難所 第3の候補なく、頓挫警戒

 全国で初めて北海道寿都町と神恵内村で始まった、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場選定第1段階の文献調査は、報告書案の公表で節目を迎えた。次の概要調査への移行が焦点となるが、調査開始から想定を超える3年3カ月に迫る中、政府が期待する第3の候補は現れない。両町村が突出したまま地元の反対に直面すれば、候補地ゼロの振り出しに戻りかねず、難所が続く。

最終処分場選定の流れ
最終処分場選定の流れ

 ▽住民投票
 「国は10カ所程度、候補地が出るように努力してほしい」。全域が概要調査の候補地になりうる寿都町の片岡春雄町長は13日、取材に対し、調査に応じるかどうか明言を避けた。現在6期目の片岡氏は、5期まで無投票当選を維持。しかし文献調査に手を挙げた後の2021年の前回町長選で、反対派候補に235票差まで迫られた。昨年10月の町議選も賛成派と反対派が5対4と僅差。慎重論を無視できない。
 概要調査前には住民投票が実施されるが、片岡氏は両町村以外に文献調査を受け入れる自治体が現れることが条件と強調する。南端の一部が対象となる神恵内村の高橋昌幸村長は「長い事業で、進むかどうかはその時々の住民の判断」と話す。
 ▽長期化
 概要調査に進むためには、知事と市町村長の同意が必要だ。ただ道には核のごみを「受け入れ難い」とする条例がある。鈴木直道知事は反対姿勢を崩さず、「北海道だけの問題ではない」としてきた。知事の同意を得られなかったり、住民投票で反対が多数を占めたりすれば、処分場選定は暗礁に乗り上げる。
 文献調査は20年11月に開始。当初は終了まで2年の想定だったが、昨年夏時点で「(公表に)3年を超えるとイメージが悪い」(経済産業省関係者)と遅れが顕著になった。
 文献調査が長期化する中、経産省や事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は水面下で第3の候補地を探し続けた。23年9月に長崎県対馬市議会が受け入れに意欲を示したが、比田勝尚喜市長が調査に応募しないと表明。新たに名乗りを上げる動きは途絶えたままだ。
 ▽論点
 経産省は文献調査と並行して、報告書の内容の評価基準作りに時間をかけた。今後、有識者による会合を複数回開く方針で、報告書の正式決定まで数カ月以上となる見通し。時間をかけ、全国的な理解や新たな自治体の文献調査受け入れにつなげる狙いだ。
 ただ論点は残っている。北海道教育大の岡村聡名誉教授(地質学)は寿都と神恵内には、周辺の地下にマグマが水で急速に冷えた「水冷破砕岩」が存在すると指摘。岩盤に亀裂が生じやすく、割れ目に地下水が入り、放射性物質の流出が懸念される。機構は「概要調査では注意して調べたい」としている。
 昨年10月には、地球科学の研究者ら有志が、地殻変動の活発な日本に地層処分の適地はないとする声明を公表。1月の能登半島地震では、想定より長い断層が連動し、広範囲で地盤が隆起した。岡村氏は今月7日、神恵内村での意見交換の場で「(海域の)活断層を調べるのは難しい」と訴えた。全国で寿都、神恵内に続く動きは盛り上がりを欠いたままだ。

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