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【能登地震からの復興】地域、産業再生に右腕派遣 人の流れを生み出す NPO法人「エティック」シニアコーディネーター・共同創業者 山内幸治

 東日本大震災から約2カ月後、復興支援のため被災地に若者を派遣する「右腕派遣プログラム」を始めた。NPOを援助する中間支援組織として活動してきたノウハウを生かし、民間事業者のなりわいの再建やNPOの活動などを支える即戦力を募集、これまで約260人を送り込んだ。

山内幸治氏
山内幸治氏

 約6割の人が現地に残り、NPOを立ち上げたり、町づくりのリーダーや道の駅の駅長になったりと活躍している。
 右腕の人件費などは当初、海外からの寄付も含め確保した。その後は受け入れ自治体と協力して国の地域おこし協力隊、ふるさと納税の制度を活用する工夫もしている。
 熊本地震の際には、地元に人材支援にたけた一般社団法人フミダスがあったので、そこでの右腕派遣の事務局立ち上げや資金を援助する形で復興を後押しした。
 北海道地震では、被災地である厚真町が、エティックが事務局を務めるローカルベンチャー協議会のメンバーだった。私たちは宮城県気仙沼市など東日本大震災の対応をした職員と共に現地に入った。外部からサポートなどのために入る人の流れづくりを後押しした。
 能登半島地震では、石川県七尾市にある中間支援組織「御祓川」を補佐している。彼らは他の組織とも情報共有し、被災地のニーズに合わせて人材や物資を送っている。当初は避難者のサポートが中心だったが、現在は市と連携して避難者の意向を調査している。
 御祓川や地元で活動するNPOなどとも協力して「能登復興ネットワーク」が設立された。災害ボランティアの活動や民間の支援と現在の連携を、今後の地域づくり、まちづくりにつなげることを目標としている。
 当面の活動は、奥能登の被災地に支援の人材を入れること、ホテルや旅館に2次避難している人へのサポート、被災した事業者が事業を再建する際の助力が中心になると考えている。
 今後は各地で復興計画づくりが始まる。その核となる能登側プレーヤーの組織や事務局の力を高める必要がある。まずはそこに能登版の右腕派遣を進めていきたい。
 能登での活動費は募金、企業からの協力が中心だ。右腕事業には人件費などが必要なので、企業からの資金で確保することを想定している。
 被災地は道路が寸断され水道の復旧も遅れているため、ボランティアらが被災地に入るスピードが他の震災に比べ遅い。春休みに金沢市などから、行く人が増える環境をつくることが必要だ。
 東日本大震災によって若者が流出し、被災地の高齢化と人口減少が急速に進んだ。能登半島も同様の厳しい事態に直面するだろう。
 今後はコミュニティーを持続可能な形で維持することが一番大事だ。地元の人たちは受け継いできた歴史、文化、祭りや食などへの思いが強い。それに共鳴して移住する人もいる。震災前には、珠洲市に本社機能の一部を移した企業がある。持続可能で豊かな集落をつくる動きもあった。
 故郷に残る人を助けながら、金沢市などの都市部と能登を行き来する人、新たに能登を目指す人の流れを生み出すような復興の在り方を私たちからも示していきたい。
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 やまうち・こうじ 1976年横浜市生まれ。早稲田大卒。在学中にエティックの事業化に関わった。認定NPO法人カタリバ理事なども務める。

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