あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 三島市

建設業でDX加速 静岡県発ネットワーク全国拡大 人材不足解消へ【迫る24年問題】

 静岡県内の建設業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。本県発の業界ネットワークは全国各地の103社に拡大し、スタートアップ(新興企業)などと連携しながら省人化や省力化に向けたシステム、ロボットの導入が進む。成果や取り組みは企業間で共有し、今春始まる残業時間の上限規制で深刻な人手不足が懸念される業界全体の課題解決につなげる。

工事現場で廃材を運び出すロボット=2月上旬、浜松市立神久呂小
工事現場で廃材を運び出すロボット=2月上旬、浜松市立神久呂小

 校舎の長寿命化工事が進む浜松市立神久呂小で、荷台を付けた横幅1メートルほどの運搬ロボット「サポット」が廊下を行き来した。廃材を一度に300キロまで搬出でき、作業員を感知して自動追従する機能も備える。施工する須山建設(同市)管理チームの木村雄紀課長は「これまで職人が一輪車に積んで何往復もした作業が一気に楽になる」。作業員の不足と高齢化が進む中、現場の安全性向上も見込む。
 サポットを開発したのは、社内ベンチャーとして2021年に設立されたソミックトランスフォーメーション(同市)。昨夏に使用した須山建設の要望を受けて耐荷重や寸法などの調整・改良を加え、2月から再び現場に投入した。事業担当の玉城彰公さんは「小回りが利くスタートアップのスピード感を大切にしている。多くの現場で使ってもらい、さらなる改良を重ねたい」と語る。
 三島市の加和太建設では、電話で行う建機レンタルの発注業務にオンラインを取り入れた。数千に及ぶ商材のデータベース化を進める東京のスタートアップ「ソラビト」、太陽建機レンタル(静岡市)との連携により、ウェブ入力だけで必要な機材が現場に届くシステムを導入。発注は24時間可能、電話がつながらないストレスや時間的なロスがなく、誤発注や返却し忘れなども抑制できる。
 静岡市の木内建設はスタートアップと連携し、会議の議事録作成に人工知能(AI)を取り入れた。過去の物件データもAIに読み込ませ、予算や建物規模の概算を短時間で顧客に提示するシステム開発にも取り組む。同社未来共創チームの望月寿人チームリーダーは「人手不足の解決には企業が連動する取り組みが必要。業界として機運を高めたい」と話した。
 (経済部・金野真仁)
 準大手ゼネコン規模に 情報交換重ね連携深化  加和太建設、木内建設、須山建設の県内3社で2022年に立ち上がった地方建設業のコミュニティー「オンサイトX」は、昨年末までに全47都道府県に拡大した。103社の総売上高は準大手ゼネコン規模の約8700億円。情報交換を毎月重ね、業界の課題解決に向けて連携を深めている。
 今春の残業規制でさらなる人手不足が懸念される「2024年問題」。建設業界は特に地方で離職率が高い若手社員への教育、職場改善などが急務な一方、各地の競合で企業間の連携が進まず、業界の古い慣習から抜け出せずにいるという。県内業者に対する22年の調査では、7割が人手不足を訴える。
 単独の地方企業では難しいスタートアップとの協業は、ネットワークの拡大で可能性が広がる。DX化は単なる省人化にとどまらず、業界内の意識改革につながるとの期待もある。オンサイトXを立ち上げた加和太建設の河田亮一社長は「人は急に増えないし、仕事を減らすわけにもいかない。それならやり方を変えていくしかない」と変革の意義を語る。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

三島市の記事一覧

他の追っかけを読む