あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 三島市

なくなる学校。地域にできることは?⑤ しずしんニュースキュレーターと読者の意見【賛否万論】

 少子化が加速する中で学校統廃合と地域の関係をテーマとし、実際に統廃合を経験した学校や地域の事例を取り上げ、保護者や自治会長の意見を紹介してきました。今回は、しずしんニュースキュレーターと読者の声をお届けします。学校統廃合に対する賛否はもちろんですが、少子化に伴う児童数激減の現実を踏まえた受け止めや保護者としての葛藤など、多様な意見が寄せられています。

当事者は心落ち着かぬ日々
キュレーター 内野浩恵さん(富士市)


 

 

NPO法人県男女共同参画センター交流会議理事。男児2人の母。司会業。市民活動20年。子育て、男女共同参画、防災、まちおこし等の団体に参画

 学校の統廃合について改めて深く考えるきっかけとなりました。現在、2人の息子が地元の小学校に通っていて、少子化により今まさに統廃合の検討委員会が重ねられているからです。
 入学前から統廃合の話が出ていることはうわさ程度で聞いていました。2年ほど前に「〇〇小学校の学校教育の未来を考える会」という市役所主導の学校関係者、保護者、地元の皆さんを交えた会議が開かれ、市から現状や未来予測の説明があり、それに対し住民から多くの意見が出されました。さまざまな意見が出ましたが、会場で得た感覚と後から確認した議事録を見ても、地元では統廃合に反対の熱い思いを持った人の方が多い印象でした。
 「この先どうなってしまうんだろう?」というモヤモヤを抱えて過ごす中、半年ほど前に息子の同級生のお母さんが、統廃合や地域の未来について住民に広く意見を聞くオンラインアンケートを作り、回答を収集するという行動を起こしてくれました。一人の強い思いから始まった行動は、口コミや交流サイト(SNS)で広がり、多くの住民の本当の気持ちを聞く機会となりました。あっぱれです。もちろん、私もすぐにアンケートを開き回答しました。
 呼びかけから3カ月ほどたった頃、そのお母さんからアンケートのお礼と集計結果が届きました。学校の統廃合の話が上がるのですから、児童数も世帯数も少ない地域です。そこで60人もの回答が集まりました。この回答数は全児童数を超えています。学校からの配布物でもなく、無記名の何の強制力もないアンケートに自分の意思で回答した人たち。問題への関心の高さが伺えます。回答者の意見は冷静で、統廃合の検討をされていることについては56%が納得でした。しかし、小学校を残すべきかの問いには、80%以上が残すべきだと回答しました。
 その他、多くの回答者が記述式の問いにも真剣に答え、メリット、デメリット、両方を兼ねた意見などで文字があふれていました。
 先日、隣接する学区の複数の情報源から「統廃合の時期が決まった。〇年後だよ!」という決定事項のようなうわさが急にいくつも飛び交いました。これは寝耳に水で、小学校に確認をしました。結果、全くのデマでした。まだ話し合いの最中で、何も決定していませんでした。
 統廃合の話は、胸が苦しくなったり、ドキッとしたり、熱い思いがこみ上げたりで心が落ち着きません。地元の人にとっては、人口減少なら早く統廃合すればいい、だけではない、もっともっと大きな話なのです。

まず少子化の現状知る
キュレーター 山本豊さん(三島市)


 

 

伊豆のわさび屋「山本食品」代表取締役。あらゆるメディア・SNSを通してわさびの魅力を世界に発信していくことがライフミッション! 「わさびをもっと、おもしろく」

 今回のテーマに対する記事を読み、切迫している現状の深刻さを把握してないことに気づきました。母校の小学校の昭和40年代と現在の1学年の児童数を調べたところ、当時に比べ現在は4分の1以下の児童数という事実に驚きました。また、私が在住する三島市内でも現在1学年に7人の児童数しかいない小学校があるということに、さらにがくぜんとしました。
 小中学校に通う子を持つ親御さんや教育に携わっている方々以外の多くの人は少子化問題は分かっていても、わが町にもこれほどまで少子化の波が切迫しているという具体数を知らない方も多いのではないのかと感じます。
 私の場合、今回キュレーターに選ばれたことで本テーマを真剣に考えるきっかけになったのですが、地域に住む一人として私にできることは、まずは「意識して知ること」、そして企業人として地元とか従来の学区の枠に固執せず、地域と学校が連携、協働することに協力する行動がとても大切だと痛感しました。

世代超えた学びの場に
キュレーター 宇野大介さん(浜松市天竜区)


 

 

京大を卒業し、塾業界で働いた後、新規就農。天竜区春野町に移住し、現在は妻と子ども3人でお茶を作っている。屋号はうの茶園。台湾茶に魅せられ、烏龍茶の製造に励む

 末っ子がこの春、浜松市立犬居小に入学。「楽しかった」と帰宅する。いつまでもそんな子どもたちのランドセル姿を眺めたい気持ちはやまやまだが、もはや手遅れかもしれないほどに児童数は激減している。
 現在、中学2年の長男は小学校の卒業式で両親に向けた手紙の中に「僕もここで子育てがしたい」と書いてくれた。果たしてそれまで母校は存続できるのか。
 彼は、昨夏「犬居SOZO学校」という活動を始めた。今すぐ児童数を増やすことは困難だが、犬居小が老若男女の集う市民大学のような場になれば、それが学校の特色にもなり、児童数もV字回復できるのではないか。楽しい想像を自分たちの手で創造しようという願いを込めた。
 しかし、彼の提案は「学校と地域をつなぐ」とうたう学校運営協議会で取り上げてもらうこともできず、肩を落とした。かくなる上は場所にこだわらず、世代を超えた学びの場を自分たちの手で確保しよう。それが本当の学校なのかも。
 この山里にいつまでも子どもの声が響くことを願う。

廃校は高齢者の居場所に
読者 桑原清剛さん(袋井市)
 過密があれば過疎もある。原因は魅力があるかないかだ。どちらも一長一短があり、人はおのおのの都合と未来を考えて定住する。
 産業が発達した現在、若者は華やかな生活を求めて都市に集中。第一線を退いた高齢者は静かな田舎と人付き合いを好み、人生の振り返りのために生活拠点を田舎に置く人もいる。そこで、一番困るのが子育てではないだろうか。これは中学卒業まで続くが、社会環境の変化により、子どもが減っているのは都市、田舎を問わず生活レベルに大差ないが、便利さを優先すると田舎の小学校、中学校に廃校が出てくる。今こそ、20年、30年先を見据えて学校を統合し、都市部と田舎の中間に置き、通学はスクールバスに重点を置けば交通事故や災害リスクを小さくすることも可能と考える。
 第一線を退いた人もまだ働く余力のある人たちに、朝夕の通学時の運転ボランティアで短時間働いてもらうのも、労働力の有効活用と交通渋滞解消の(送迎の車の削減)になると考える。個人よりも地域の便利を考えた方が有利になることもある。
 廃校になった所は高齢者の居場所としても活用したい。もともと自分が勉強した学びやでもある。さらに日本では地震等による災害も無視できない。上等ではなくても廃校を一時的に住める程度にしておけば仮設住宅の建設も少なく済むのではないか。インフラ整備も十分に進み、次は仲間と楽しく活動できる場所が必要になると思う。これらの整備は個人ではできにくいが、県や市にお願いしたい。

次回も同じテーマでしずしんニュースキュレーターや読者の意見を紹介します

ご意見お寄せください
 少子化が加速する中で、あなたは学校の統廃合と地域の関係について、どう考えますか。統合後も活気あふれる地域を維持するためには何が必要でしょうか。さまざまな観点からの投稿をお待ちしています。
 宛先は〒422―8670(住所不要) 静岡新聞社編集局「賛否万論」係、<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>

キュレーター
 「しずしんニュースキュレーター」は、新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

三島市の記事一覧

他の追っかけを読む