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テーマ : 三島市

日本語教室 善意頼みに限界 外国人学習支援 問われる多文化共生 高まる需要 公的対応広げて【静岡県知事選】

 「人数が増えて国籍も多様。ボランティアの方々にお願いするのは酷な状況になってしまって」。5月中旬、静岡市国際交流協会が毎年開く外国人を対象にした日本語教室の開講日。同協会の地域日本語教育コーディネーター増田奈美さん(54)が窮状を吐露した。

日本語を学ぶ中国やフィリピンの受講者=5月中旬、静岡市葵区
日本語を学ぶ中国やフィリピンの受講者=5月中旬、静岡市葵区

 国が外国人労働者の受け入れを拡大する中、需要が高まっている同教室。昨秋、それまでボランティアに頼っていた指導を、日本語教師の養成プログラムを受けた人らと契約して態勢を強化した。本年度の受講者は現時点で中学生から70代まで18カ国約70人。日本の義務教育を受けたものの高校に進学できなかったり、新型コロナウイルス禍後に親に呼び寄せられたりした子どもの姿が目立つようになり、対応は複雑化している。
 昨年来日した中国籍の呉展翔さん(16)は語学学校に加えて同教室にも通って日本語習得に励む一方、「高校に行きたいけれど、受験のことや勉強の仕方が分からない」と打ち明ける。市内では他の日本語教室でも同様の悩みを抱える子どもは多く、同協会は本年度、進路相談事業を始める。増田さんは「子どもたちは進路が見通せなければ日本語学習も続かない。結果的に不登校やひきこもりになっているケースは少なくない」と支援の重要性を強調する。
 県教委は各学校に相談員や日本語指導コーディネーターを派遣するなどしているが、外国人の居住地が散在しているため網羅できず低額や無償で支援をする地域団体の存在は大きい。
 「静岡県は『多文化共生の先進地』として認識されるているけれど、本当にそうでしょうか」。三島市で外国にルーツのある子に関わってきた石井千恵子さん(65)は疑問を投げかける。外国人居住者が多く行政支援に積極的な県西部のイメージが先行しているに過ぎないとの指摘だ。自身は2010年に支援団体「のびっこクラブみしま」を設立。子どもたちに勉強を教える傍ら、学校に出向いて個別の対応策を話し合ったり、他団体と市に働きかけて施策につなげたりした。地道な実態調査は、外国人を含めた学び直しの場となる夜間中学「県立ふじのくに中学校」の開設に役立てられた。
 ただ、コロナ禍を契機にボランティアとして参加する人が減り、同クラブの活動の継続に困難さがあるという。「外国人は既に労働力などの面で地域社会に必要な存在。今までのように各地で『一歩、一歩』でなく、公的支援を広げてほしい」と訴える。
 (教育文化部・鈴木明芽)
政党公認、推薦候補者に聞く(届け出順)  ■県は昨春、県内初の公立夜間中学「県立ふじのくに中学校」を開校し、教育の受け皿を広げた。不登校の児童生徒や外国人らへの教育のセーフティーネットをどう構築するか。

 森大介氏(共産公認) 不登校児童生徒を支援しているフリースクール、子どもサポートセンター、NPOなどへの運営費の補助を拡充する。「無料塾」などの学習支援事業を進める。外国籍の児童生徒への日本語学習やコミュニケーションへの支援をする。

 鈴木康友氏(立民、国民推薦) 不登校の児童生徒に対しては新たに導入するバーチャルスクールやフリースクールなどとの連携により、誰一人取り残さない教育を進める。外国人に対しては、不就学児童ゼロを目指した取り組みで実績を挙げた経験があるので、これを全県に展開したい。

 大村慎一氏(自民推薦) 不登校やひきこもり、生活困窮の方々が学習機会を失わないようにオンライン授業の提供、学習指導員による訪問などの手法を幾重にも手がける。外国人の方々には日本語習得がまずは大切。小中学校の設置者である市町から声を聞き、日本語教育を充実させる。

 <メモ>外国籍の子どもは、2023年5月1日時点で、県内の小学校に4067人、中学校には1882人が在籍した。このうち日本語指導が必要な児童生徒は8割に上り、5年前と比較して1割程度増加。高校進学率は全中学生と比較して10ポイント近く低いとされる。

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