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テーマ : 三島市

なくなる学校。地域にできることは?⑦ しずしんニュースキュレーターと読者の意見【賛否万論】

 今週も少子化時代の学校統廃合と地域の関係をテーマに、「なくなる学校。地域にできることは?」と題して、しずしんニュースキュレーターや読者の声を取り上げます。学校統廃合の是非に関しては賛否が割れていますが、地域活性化に向けた人材育成の必要性や、災害時に備えて地域のつながりを維持する大切さを指摘する意見が出てきています。


災害時 つながりが救いに
キュレーター 中野ヤスコさん(藤枝市)


 
管理栄養士・公認スポーツ栄養士。健康食堂「くるみキッチンプラス+」を拠点に、食事提供を通した栄養サポートに取り組む。息子2人が大学生で県外在住になったため、夫と愛犬との新しい生活に慣れようと努力中

 20年前に移り住んだ今の土地には小学校に隣接する公民館(本年度より地区交流センターに移行)があり、縁もゆかりもない土地で、地域の方々への栄養講座や料理実習の講師、また祭りや運動会等を通して半強制的に地域と関わっていました。わが子たちも地域の方々と関わる機会をたくさんいただきました。中学から市外の学校へ行くようになっても彼らにとっては戻る場所、居場所だったのです。
 2022年の台風15号による大雨では、わが家の床上浸水、所有する2台の車が水没する災害に遭いました。被害の少なかった地区の方からの支援を受けながら近所の皆さんと励まし合い、地域での助け合いによって心も救われました。
 学校は、地域がつながる機能として大変有効であったけれど、地域と学校の連携はコミュニティースクール(学校運営協議会制度)を活用し、子や孫がいない家庭であっても関わることができると思います。各地区交流センターを中心に、ゆるくつながっていきたいと思います。

住民一人一人が問題意識高めて
読者 江口裕司さん(三島市)65歳
 これまで私は「教育の目的は幸福、学校はその養成手段」と考えてきました。学校の統廃合はその目的と手段をどう担保するか。今回のテーマの問いだと思います。にわか知識によると、学校統廃合の背景には二面性がありそうです。過疎化による少子化と、都市化を促す効率化です。
 東京都立大学の山下祐介教授は、文部科学省の示す「小中学校の適正規模」を美化した行政都合の統廃合は見直すべきと主張します。小規模校の良質な教育が実証されていないからです。少人数で実現する効果的な教育と、集約で実現する効率的な行政。そもそも教育権と行政権がそういった二面性をはらむため、統廃合の議論は二元論に陥りがちです。
 理想論ながら少子化だからこそ学校を充実させ子育て世代の転入を増やし、地域の活性化を図るのが地方行政の本筋です。そうは言っても、さすがに静岡市の旧清沢小のように学年1人だけでは学校機能は回らないでしょう。ただ、小規模校では社会性は育たないとの懸念は杞憂[きゆう]です。私は会社員になってから「君たちはどう生きるか」を嫌というほど学びました。
 教育は、行政都合で効率化する「ハコモノ」ではありません。子ども都合に手間ヒマかけて寄り添う営みです。学校は、地域コミュニティーと密接な文化や伝統を継承しながら子どもを育成する役割も担っています。その営みと役割を尊重し、まずは小規模校の良さを生かす教育行政を考えるべきだと思います。先ほど述べた二元論に留意し、統廃合を批判的に議論できるよう、住民一人一人が問題意識を高めておきたいものです。

行政も住民も 創意工夫の力を
読者 ひまじんさん(磐田市)68歳
 散歩をしていると、下校する子供たちに行き会うことがある。われわれ高齢者は子供たちの元気な声を聞くだけで、こちらも元気をもらったような気になる。子供から高齢者までバランスよく暮らす街は理想だが、そんなことを言っていられない状況だ。先日、「消滅可能性のある自治体」が発表されたが、少子高齢化の流れは、現状維持にさえ四苦八苦する多くの自治体を生み出した。
 しかし、人がどこに居を構えようがそれは自由である。故郷がどうこうより、家族第一と考えれば、住みやすく子育てしやすい街に人が集中するのは仕方ないことだろう。多くの自治体が移住促進のための施策を打ち出すが、この国の総人口が増加に転じない限り、それは限られたパイを奪い合うことでしかない。
 学校の統廃合も、こういった流れの中では避けられないことだろう。学校から子供の声が消え、母校が廃校になって校舎が朽ち果てていくのを見るのは寂しくつらい。しかし、あれだけの施設を活用しない手はない。校舎を宿泊施設にすれば、人を呼び込む起爆剤になるかもしれない。グラウンドは、高齢者にグラウンドゴルフ場として開放する。家庭科室で「男の料理教室」もいいかもしれない。学校という既存の施設があるのだ。後はそれをどう使うかという知恵と工夫と、活動をリードする人材。学校を「地域活性化のための資源」とする視点があれば、学校は教育の場ではなく、住民の憩いの場として地域の中心となり得るだろう。そういう創意工夫が、行政にも地域に住む人たちにも求められている。

多様化対応には一定規模必要
読者 岩崎匡洋さん(静岡市清水区)60歳
 少子化に伴う学校の統廃合に関しては、小学校の存続が地域に与える影響より子供の教育環境のことを優先させるべきです。以前、教育関係者から、子供の祖父母世代は地域に学校があることにこだわり反対が多く、親の世代は複式学級や集団活動、人間関係の固定化など先のことを考え賛成が多いと聞きました。
 これからは多様化の時代です。子供たちが多くのいろいろな人たちと出会い、さまざまなタイプの人や考え方の人がいることを知り、体験し向かい合い成長していかなければならない時代です。それにはある程度の規模の学校が必要です。静岡市清水区両河内地区や葵区の藁科地区など、地区ごとの統合なら影響は最小限になると思います。
 地域の住民にできることは、両河内地区のように地元の住民が運転手になり運行しているココバスで児童生徒の通学を見守ることだと考えます。顔見知りの地元住民の送り迎えであり、子の親にとってはとても安心できることでしょう。

地域は冷静な受け止めを
読者 鈴木勝夫さん(浜松市天竜区水窪町)71歳
 私が住んでいる浜松市天竜区水窪町はご案内のように少子高齢化が進行している地域です。本年度の水窪小の入学児童は1人です。同じ天竜区の横山小以北(旧春野町を除く)では入学児童がいたのは水窪小のみでした。
 学校の統廃合は水窪地区では過去に分校を中心に行われてきました。多くの分校が閉校となり、本校に統合されました。しかし、その本校も今や全校の児童数が30人弱となり、幼稚園児も数人の状況です。
 地域から児童生徒の声が聞こえなくなってくるのはさみしい限りです。高齢者ばかりの地域になってしまっています。本来なら赤ちゃんからお年寄りまでバランス良く年齢構成の人口ピラミッドであれば良いのでしょうが、現実はそうもいきません。
 お子さんをお持ちの親御さんは子どものことを第一に考えます。この子のためにはどうしたらいいかと。同級生が一人もいないとかわいそう、みんなとの協調、対外的にもまれなくなるなど心配します。その時のPTAの意見は重いものがあります。
 地域は冷静に受け止める必要があるかと考えます。今の児童生徒を地域は温かく見守っていくことが大事です。

■次回も同じテーマで読者の意見などを紹介します

 キュレーター 「しずしんニュースキュレーター」は、新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。

 

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