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議論取りまとめ踏み込まず 国交省専門家会議【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を議論した25日の国土交通省専門家会議(座長・福岡捷二中央大教授)は、トンネル内に湧き出る地下水が県外に流出する問題や流域全体の地下水の流れについてJR東海に追加の検討を求め、次回以降も検証を進める方針で一致した。前回会議で言及があった議論の中間取りまとめには踏み込まなかった。

福岡捷二座長のコメント要旨
福岡捷二座長のコメント要旨

 会議でJR東海は、山梨県境付近の大規模断層が想定される区間では、工事の安全性などの観点から上り勾配で掘削し、工事中の一定期間は湧水の全量を川に戻せないとする従来の主張を繰り返した。トンネル湧水の全量を川に戻す方法として、湧水を川に送る導水路トンネルの場所を変える▽水が流出しないように下り勾配で機械掘削▽深井戸を掘って水をくみ上げる―などを検討したが、水と土の圧力や地質、施工条件などの問題でいずれも「極めて困難」だとした。
 委員は湧水量の評価や施工管理についてさらなる検討をJRに求めた。
 工事の地下水への影響について、JRは上流域の地下水位低下が中下流域の地下水に影響を与える可能性は「極めて低い」と主張した。トンネルの規模などを決める目的で実施した分析の結果、地下水位は低下するが、範囲は上流域にとどまるとした。また、文献調査と実測データから、中下流域の地下水は雨や川の水によって保持され、長期的に安定しているとした。
 委員からは、上流域と中下流域の地下水の関係に関する説明が地質の観点から不十分だとの指摘があった。会合後に委員全員が確認してまとめた座長コメントでは「トンネル湧水を適切に戻す範囲では、おおむね問題ないと言えるとの複数の意見があった」としつつ、JRに対して静岡市が実施した調査などを含めてさらに検討を進めるよう指示した。
 会議では、県が13日に国交省へ提出した、JRの流量予測の方法などを批判した文書は話題にならなかった。会議事務局を務める同省鉄道局の江口秀二技術審議官は会議後の会見で「(県からの文書は)委員にも配布している。議論の全体に含まれている」とした。

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