
取材班 おすすめコンテンツ
新着記事
-
JR「政府見解」文書を公開 田代ダム案など巡り静岡県質問に回答 県「法的懸念は解消」 リニア大井川水問題
リニア中央新幹線トンネル工事に伴う大井川水問題についてJR東海と国土交通省は27日までに、静岡県が東京電力田代ダム取水抑制案などに関して問い合わせていた質問に回答した。JRは、同案は水利権の譲渡に当たらず河川法上問題ないとする「政府見解」が記された文書を公開した。 政府見解が記された文書は、1月25日開催の県有識者会議の専門部会で提示された。国交省鉄道局施設課長名で「政府部内で整理した結果」として2022年12月1日付でJR東海に回答していた。 県が「田代ダム案が水利権の譲渡に当たらないのであれば、(抑制したことに対してJRが東電に何らかの)『補償』をしても河川法上禁止されるものではないのか」と確認したのに対し、国交省鉄道局は「貴見のとおり」と回答した。 県の石川英寛政策推進担当部長は会議後の取材で、同案の法的な懸念に対しては回答を受け解消したとの認識を示した。 JRが山梨県から静岡県境を越えて実施する方針を示している高速長尺先進ボーリングに関しては、県が「なぜ2段階の調査を重複して行うのか」と質問したのに対し、JRは「未調査部分の調査と県境付近の断層帯の調査(で目的が異なる)」などと回答した。 22年12月4日に開催された専門部会で出た委員と県の意見を文書でまとめ、JRに回答を求めていた。県の担当者は「(政府見解の回答以外は)納得しがたい部分も多く、JRに再確認したい」と話した。
-
田代ダム案、東電と協議へ JR東海 県専門部会で表明 協力得られるか焦点【大井川とリニア】
静岡県庁で25日開かれたリニア中央新幹線トンネル工事の大井川水問題を協議する県有識者会議の専門部会で、JR東海はトンネル湧水の県外流出対策として提示していた田代ダム取水抑制案について、ダムを管理する東京電力との協議を開始すると表明した。同案の実現可否を巡る議論の焦点は、JRが東電の協力を取り付けられるかに移ることになる。 JRは、東電から提供を受けた過去10年間の日ごとの河川流量実測値を示し、渇水期も含め「全ての日で還元(必要な取水抑制量の確保)が可能」と案の実現に自信を示した。同資料の提出を求めていた森下祐一部会長(静岡大客員教授)は一部のデータが示されていないことに懸念を示したものの、会議後の取材に「一応のデータはそろった」との認識を示し、東電との協議を「ぜひやっていただかないと」と述べた。 一方で懸念も残っている。山梨県から静岡県に向けて実施する高速長尺先進ボーリングで山梨側に流出する湧水を静岡側に戻す方法として田代ダム案の活用が有力視されている。JRの沢田尚夫中央新幹線推進副本部長は「県境をまたぐのがだめだとまさか言われると思っていなかったので、東電とその話はしていない」とし、今後の協議に不安をのぞかせる場面があった。 同案を巡っては委員から工事後の継続した活用に期待する声もあるが、沢田副本部長は「水利権が削られるなどの話になると東電は協議につけない。工事期間中限定の方策という前提で話したい」と強調した。 県の石川英寛政策推進担当部長は、東電が冬場に必要としている毎秒0・81トンの発電施設維持流量がJRの試算に考慮されていないことから「確認が必要」との考えを示した。
-
県境ボーリング見合わせ JR東海 水戻す方法決定まで【大井川とリニア】
リニア中央新幹線トンネル工事に伴う大井川水問題を協議する静岡県有識者会議の地質構造・水資源専門部会が25日、県庁で開かれた。JR東海はこれまで山梨県から静岡との県境を越えて実施する方針を示していた高速長尺先進ボーリングについて、山梨県側へ流出する湧水を静岡県側に戻す方法が決まるまで実施を見合わせると表明した。 JR東海は昨年10月に県境越えボーリングの実施を表明したが、県は「県境付近の断層帯の水が抜けるリスクがある」と計画の見直しを求め、流域市町の首長からも専門部会委員との意見交換の場などで同様の考えが示されていた。JRはこうした意見を踏まえて方針を改めた。 JRは静岡県側に湧水を戻す方法として田代ダム取水抑制案の活用が有力との見方を示し、今後、ダムを管理する東京電力と実現に向けた協議を進めるとした。 一方で「トンネル湧水に関する不確実性を低減し、流域の懸念を解消するために重要」とボーリングの意義をあらためて説明し、山梨県内の先進坑先端部から2月初旬にも穿孔(せんこう)を開始し、県境付近までは進めるとした。 専門部会委員と県はボーリングが県境に近づいた場合、県内の地下水がボーリングで空いた穴に引っ張られる形で流出する可能性に懸念を示し、どの地点で穿孔を止めるかについては引き続き協議を求めた。 田代ダム案についてはJRが過去10年間の河川流量データを示した上で「渇水期にも実現可能」との見解を改めて伝えた。委員から一定の理解を得たとして東電と具体的な協議を開始すると報告した。 (政治部・尾原崇也、杉崎素子)
-
リニア「メリット説明を」 川勝静岡県知事、岸田首相に文書
川勝知事は24日の定例記者会見で、リニア中央新幹線開業後の県内の東海道新幹線駅停車本数増に向けた国の調査に関し、2027年開通を目標とする品川―名古屋間のリニア部分開業時の調査などを求める文書を岸田文雄首相宛てに送ったと発表した。「(最短で37年の)全線開通までの14年間に、どうなっているかを今生活している人は知りたい」と述べた。 県東京事務所の担当者が24日、衆議院議員会館にある岸田首相の議員事務室に直接届けたという。 川勝知事は文書で、JR東海が部分開業により経営体力を回復させて大阪までの全線開通を目指す「2段階方式」を採用していることにも触れ、部分開業段階のリニアの需要調査を行う意義を強調した。その上で、部分開業後にのぞみからリニアへ転換する乗客数割合や、リニア・のぞみの運行本数、ひかり・こだまの県内6駅の停車回数などを提示し、本県が全線開業までの間に享受できるメリットを説明するよう求めた。 コロナ禍などの社会動向の変化や、名古屋で乗り換える手間などを踏まえると、部分開業段階のリニア需要には疑問があると文書で指摘し、会見で「2段階方式が本当に合理的なのかしっかり調べてほしい」と述べた。 全線開業後の調査については知事は「十数年の間にどれほどの社会情勢の変化があるか分からない。一般論を語るのは政府が金や人を使ってやる調査としては向かない」と述べ、意義を見いだしづらいとした。