テーマ : 大井川とリニア

「準備工事」すれ違う見解 県とJR、駆け引きヤマ場 開業延期不可避の見方も

 リニア中央新幹線の2027年開業に向けた静岡工区の着工を巡り、県とJR東海の駆け引きがヤマ場を迎えている。川勝平太知事は11日にリニア工事に関連する現場を視察し、金子慎社長との面会にも前向きな姿勢だ。ただ、JRが県に6月中の同意を求める非常用トンネル入り口となる部分の樹木伐採や整地などの「準備工事」について、県は「本体工事と一体だ」との認識。双方の見解はすれ違ったままだ。JRが目指す東京・品川-名古屋間の27年開業の延期は避けられないとの見方も強まっている。

記者会見でリニア問題の質問に答える川勝平太知事=10日午後、県庁
記者会見でリニア問題の質問に答える川勝平太知事=10日午後、県庁
リニアの開業遅れに危機感を示すJR東海の金子慎社長=10日午後、名古屋市
リニアの開業遅れに危機感を示すJR東海の金子慎社長=10日午後、名古屋市
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡るJR東海と県の見解の違い
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡るJR東海と県の見解の違い
記者会見でリニア問題の質問に答える川勝平太知事=10日午後、県庁
リニアの開業遅れに危機感を示すJR東海の金子慎社長=10日午後、名古屋市
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡るJR東海と県の見解の違い

 「準備工事」を巡ってJRが動いたのは5月20日。同社社員が県庁を予告なしで訪れ、県の担当者に川勝知事宛ての文書を手渡した。金子社長名の文書には「工程は大変切迫した状況にあり、6月中にもヤード(作業基地)整備等の準備を再開する必要がある」と記され、知事と面会して直接説明したいとの意向を伝えた。金子社長は5月29日の記者会見で、6月中に県の同意が得られなければ、27年開業は難しくなると踏み込んだ。
 こうしたJRの対応に、県側は警戒感を強めている。現在、協議が進められている県や国土交通省の有識者会議では、JRの説明の分かりにくさやデータ不足が指摘されている。議論を遅らせて工程を切迫させているのはJRだというのが県側の認識。県幹部は「着工できない理由はJR側にあるのに、静岡を(開業遅れの原因として)悪者にしたいのか」と不信感を募らせる。
 JRが県に同意を求めた「準備工事」への共通理解がないことが事態を複雑にしている。10日の記者会見で金子社長は「できるところまで『準備』を進めたい」と強調。JR側は「県には準備工事が何なのか伝わっているはず」と指摘する。
 ところが、川勝知事は同日の記者会見で「準備工事」は工事現場に向かう作業用道路の整備と認識していると説明。「『準備工事』の中身は言う人によって違う。11日に(視察で)見てから決める」とJRの求めに応じて工事に同意するか判断を保留した。県幹部は「知事の視察でJRから詳しい説明を聞けるのではないか」とするが、「準備工事」を巡る両者の溝が埋まるかは見通せない。

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