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【世界の街から】報復

 ウクライナ国境から約30キロのロシア西部ベルゴロドで昨年末、25人が死亡する攻撃があった。負傷者は100人を超え、ウクライナが実行したとされる越境攻撃としては最大規模となった。犠牲者の多くが市民だった。

ウクライナが実行したとされる攻撃で破壊された車=2023年12月30日、ロシア・ベルゴロド(ゲッティ=共同)
ウクライナが実行したとされる攻撃で破壊された車=2023年12月30日、ロシア・ベルゴロド(ゲッティ=共同)
ウクライナ東部ハリコフ中心部を歩く市民=11日(共同)
ウクライナ東部ハリコフ中心部を歩く市民=11日(共同)
ウクライナが実行したとされる攻撃で破壊された車=2023年12月30日、ロシア・ベルゴロド(ゲッティ=共同)
ウクライナ東部ハリコフ中心部を歩く市民=11日(共同)

 この攻撃に対するウクライナ市民の反応に驚いた。一般人が犠牲になったことに困惑する声がある一方、「仕返しだ」「(ロシアに繰り返し攻撃された国境近くの都市)ハリコフを忘れるな」と大半が攻撃を支持しているようだった。
 複雑な気持ちになったが、しばらくしてこの反応は当然なのかもしれないと思い直した。彼らは人殺しを支持しているわけではない。背景にあるのは取り返しのつかない怒りだ。
 ロシアが2022年2月に軍事侵攻を開始後、ウクライナでは1万人を超える市民が命を落とした。戦死する兵士の数は日々増え続け、ウクライナ人の6割以上が侵攻で少なくとも1人の家族や友人を失ったとされる。
 ロシアからのミサイルや無人機攻撃は今も各地で相次いでいる。防空態勢が強化され被害は減っているが、主戦場であるウクライナで戦争を感じない日はない。隣国に対する嫌悪と不信感は侵攻でピークに達した。和平は考えられないというのが多くのウクライナ人の本音だろう。
 ロシア国内へのウクライナの攻撃は激しさを増しているように見える。市民の犠牲の拡大は歓迎できない。しかし忘れてはならないのは、ロシアが侵略し続けている事実だ。
 ロシアのプーチン大統領はベルゴロドへの攻撃を「テロ」だとし、自国の負傷兵の前で反撃を誓って見せた。大統領府が公開した映像の中で、兵士らは真剣な表情で聞き入っていた。(キーウ共同=根本裕子)

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