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【衆院政倫審】傍観一転「俺が出る」 首相奇策、見えぬ信頼回復

 岸田文雄首相が、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会に出席するという奇策に出た。公開を渋る安倍派幹部に指導力を発揮せず、傍観の構えから一転、膠着する国会の打開へ「俺が出る」と決断。自ら捨て石となる覚悟を示し、安倍派幹部の公開審査実現を引き出した。だが首相の選択を評価する声は決して多くない。ごたごたが続く政権の信頼回復につながる見通しはない。

衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会を巡る岸田首相の思惑
衆院政治倫理審査会を巡る岸田首相の思惑
岸田首相の衆院政治倫理審査会出席を巡る与野党反応
岸田首相の衆院政治倫理審査会出席を巡る与野党反応
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会に出席する意向を示したことについて、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前
衆院政治倫理審査会を巡る岸田首相の思惑
岸田首相の衆院政治倫理審査会出席を巡る与野党反応

 ▽安倍派巻き返し
 「私自身が政倫審に出席します」
 28日午前9時。首相は自民の浜田靖一国対委員長に電話し、おもむろに告げた。政権の要路への連絡を終えると、午前10時46分、官邸で記者団の質問に答える形で政倫審出席を正式表明した。
 与野党は28、29両日で大筋合意していた政倫審の開催方式を巡りもめにもめた。自民は当初、安倍派と二階派の幹部5人が対象の政倫審について完全非公開を主張。27日には「議員傍聴のみ可」から「記者の取材と録音は許可」まで譲歩したが、午後になり突如、開催見送りへかじを切った。
 安倍派の西村康稔前経済産業相は元々、公開審査に前向きな姿勢を周辺に示していた。ところが「公開に慎重な別の安倍派幹部が『1人だけ抜け駆けするのは駄目だ』と巻き返した」。野党と綱渡りの調整をしていた自民国対幹部は内幕を明かすと、苦虫をかみつぶした。
 ▽成功体験
 2024年度予算案の3月中の成立が確実となる3月2日までの衆院通過を目指し、何とか政倫審の日程をはめ込み、国会を前に進めたい首相。これまで国対任せで表立っての介入は避けていたが、混迷が深まるばかりで焦りが募る。どうするべきか。27日午後7時10分、公邸に戻ると打開策を講じ始めた。
 首相の頭を1月の出来事がよぎっていた。自ら率いた岸田派の解散表明で先手を打ち、安倍、二階両派を追随させた「成功体験」(官邸関係者)だ。今回も率先して全面公開の政倫審への出席を宣言すれば、安倍派幹部を翻意させ、自身の指導力も示せる―。そんな思惑から、周囲には「説明責任も予算成立も両立させる」と息巻いた。
 ▽お呼びじゃない
 「首相も危険な賭けに出たな」。28日午前、首相から政倫審出席を耳打ちされた党幹部はうなった。午後になって首相のシナリオ通りに公開審査容認で安倍派幹部らの足並みはそろったものの、首相のスタンドプレーに対し、安倍派どころか党全体がそっぽを向き、求心力が弱まるリスクを抱えていたためだ。
 もっとも野党が政倫審への出席を求めていた51人の中に首相は入っていない。国民民主党の玉木雄一郎代表は「苦肉の策で出るのだろうが、お呼びじゃない」と批判。自民内にさえ「首相が出るのは本筋でない。裏金を批判する世論が求めているのは、事件の真相究明につながる安倍派幹部の真摯な弁明だ」(ベテラン)との指摘がある。
 「疑惑議員の駆け込み寺」とされた政倫審の開催だけでも右往左往した自民。首相は一体、何を話すのか。そして公開審査になかなか応じず「悪あがき」(立憲民主党幹部)を続けた安倍派幹部は今回の☆(眞の右に頁)末をどう説明するのか。真実はどこまで語られるのか。
 自民重鎮は、裏金事件の闇の解明へ政権は覚悟を持って取り組まないと、首相演出のサプライズは水泡に帰し、政権運営が行き詰まりかねないと警鐘を鳴らす。「それでなくても政倫審を巡る迷走で、国民はあきれ返っているんだから」

いい茶0

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