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【スウェーデンNATO加盟決定】200年の非同盟に終止符 「北欧の強国」へ期待の目

 ハンガリーの議会が26日にスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を承認し、NATOが32カ国に拡大することが決まった。2年前のロシアのウクライナ侵攻を機に、スウェーデンは200年以上続いた中立政策に終止符を打ち、米欧との軍事同盟への道を踏み出した。高性能の兵器を開発し高い防衛力を築いてきた北欧随一の「軍事強国」に、加盟国の期待は高まる。

26日、記者会見するスウェーデンのクリステション首相=ストックホルム(Magnus Lejhall/TT News Agency提供・AP=共同)
26日、記者会見するスウェーデンのクリステション首相=ストックホルム(Magnus Lejhall/TT News Agency提供・AP=共同)
スウェーデン・ストックホルム近郊の海軍基地を訪れたクリステション首相=20日(ロイター=共同)
スウェーデン・ストックホルム近郊の海軍基地を訪れたクリステション首相=20日(ロイター=共同)
26日、記者会見するスウェーデンのクリステション首相=ストックホルム(Magnus Lejhall/TT News Agency提供・AP=共同)
スウェーデン・ストックホルム近郊の海軍基地を訪れたクリステション首相=20日(ロイター=共同)

 ▽転換
 「200年にわたる中立と非同盟の方針を転換する。大きな一歩だ」。ハンガリーの承認を受け、スウェーデンのクリステション首相は記者会見で「NATO加盟はスウェーデンが平和と自由のために他の民主主義国と共に歩むことを意味する」と強調した。
 19世紀初頭のナポレオン戦争以降、スウェーデンは他国と交戦せず、非同盟・中立を国是としてきた。しかし冷戦後の1990年前半から徐々にNATOとの関係強化に乗り出し、94年には欧州中立国や旧ソ連諸国とNATOの協力枠組み「平和のためのパートナーシップ」を締結した。
 2008年にロシアとグルジア(現ジョージア)が軍事衝突し、14年にはロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合したことで、国内でNATO加盟の議論が熱を帯びた。それでも慎重だった世論を決定的に動かしたのは、22年2月のロシアのウクライナ全面侵攻だった。同年5月、スウェーデンは同じく中立政策を掲げてきたフィンランドと共に、NATOへの加盟申請に踏み切った。
 ▽軍拡と懸念
 スウェーデンは10年に徴兵制を廃止したが、ロシアの脅威の高まりを受けて18年から復活させた。クリステション氏は「陸空海でNATOに防衛力を提供し、国防費と兵力も増強する」と意気込みを示した。
 スウェーデンは欧州でも有数の軍事大国として知られる。グリペン戦闘機など多様な国産兵器を有するほか、28年までに次世代のA26型潜水艦2隻も加える計画。初の潜水艦導入は1904年にさかのぼり、ロシアと欧州に面するバルト海の安全保障を巡っては豊富な専門知識を持つ。
 NATOはこの潜水艦隊に期待を寄せる。バルト海では2022年9月、ロシア産天然ガスをドイツに送る海底パイプラインでガス漏れが発生。NATOにとって同地域の重要インフラの安全確保は喫緊の課題となっている。
 一方、スウェーデン国内では懸念の声も上がる。平和団体「スウェーデン平和仲裁協会」は26日「加盟によって安全が高まるわけではない」と指摘、むしろ軍事的脅威がより身近に迫るとして危機感を示した。(ロンドン共同=植田粧子)

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