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【出生数過去最少】地方に危機感、対策腐心 女性定着、業務デジタル化

 2023年の出生数が過去最少を更新した。人口減少に拍車がかかる中、岸田政権は「次元の異なる対策」で反転を狙うが効果は未知数だ。地方の危機感はとりわけ強く、少子化傾向の打開には女性の定着が鍵を握るとみて取り組みを強化。行政サービスを維持するため、業務のデジタル化を進める動きも広がる。

中学や高校の女子生徒を対象に兵庫県豊岡市が開催したプログラミング教室=2023年8月(同市提供)
中学や高校の女子生徒を対象に兵庫県豊岡市が開催したプログラミング教室=2023年8月(同市提供)
生成AIを使って業務する神奈川県横須賀市の寒川孝之デジタル・ガバメント推進室長=14日、横須賀市役所
生成AIを使って業務する神奈川県横須賀市の寒川孝之デジタル・ガバメント推進室長=14日、横須賀市役所
主な少子化・人口減少対策イメージ(似顔 本間康司)
主な少子化・人口減少対策イメージ(似顔 本間康司)
中学や高校の女子生徒を対象に兵庫県豊岡市が開催したプログラミング教室=2023年8月(同市提供)
生成AIを使って業務する神奈川県横須賀市の寒川孝之デジタル・ガバメント推進室長=14日、横須賀市役所
主な少子化・人口減少対策イメージ(似顔 本間康司)

 ▽存亡
 「国民を巻き込んで対策に本気で取り組まないとまずい」。政府関係者は75万人台にまで落ち込んだ出生数にショックを隠さない。「少子化は地方にとって大きな危機だ。インフラの維持管理が難しくなり、行政機能も低下し、住みづらくなる」と話した。別の関係者も「国の存亡にかかわる」とした。
 厚生労働省によると、出生数は減少傾向が続き、総人口は2008年の1億2808万人をピークに落ち込んでいる。岸田政権は児童手当の拡充などを打ち出したが、子どもがいる家庭への給付が中心。所得が低いことなどを理由に結婚や出産をためらう人への対応が乏しいとの指摘もある。武見敬三厚労相は27日の記者会見で、若者の所得向上など経済基盤強化に取り組む考えを示した。
 ▽働きがい
 地方では若い女性が東京など都市部に転出し、少子化が加速する要因の一つになっている。総務省の23年人口移動報告によると、20~30代の男女が転出超過となったのは埼玉、東京、神奈川、大阪を除く43道府県で、うち29道県は女性の人数が男性を上回った。
 岐阜県もその一つ。十六総合研究所(岐阜市)の萩原綾子研究員は、県内の主要産業の製造業では「正規雇用の男性が長時間労働になりがちで、家事や育児の負担が女性に偏る傾向にある」とし、企業の働き方変革が不可欠だと指摘する。
 兵庫県豊岡市は若い女性が進学を機に「すーっといなくなる」状況を憂慮し21年3月、男女格差の解消戦略を策定。地元企業と協力し「女性が働きがいのある職場づくり」を進めている。企業のニーズが高いIT人材の確保につなげようと、中学や高校の女子生徒を対象としたプログラミング教室などを企画。担当者は「市外へ転出したとしても、一人でも多く戻ってきてもらいたい」。
 ▽DXしか道なく…
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は56年に1億人を下回り、2100年に6278万人になると見込まれる。有識者らでつくる「人口戦略会議」は2100年の総人口を8千万人の水準で安定させれば、人口が減っても社会の成長力を維持できると提言した。
 人手不足が懸念される中、業務のデジタル化にかじを切ったのは神奈川県横須賀市。全国の自治体で初めて23年4月、文章や画像を作り出す生成人工知能(AI)を導入し、行政文書の草案作りなどに活用している。
 転出入に関する申請書を住民がオンラインで作成できる仕組みも構築。申請書はQRコードにデータ化され、市役所の窓口で提示する。引っ越しシーズンの窓口での待ち時間は最大100分から38分へ短縮できた。
 市は20年時点で約3800人いた職員が40年ごろに4分の3に、60年ごろには半減すると試算する。寒川孝之デジタル・ガバメント推進室長は「デジタルトランスフォーメーション(DX)で業務を徹底的に効率化するしか道はない」と話した。

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