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【政治資金問題】巨額移動、制度抜け穴利用 議員と団体の関連不明

 政治改革国会が進む中、自民党の茂木敏充幹事長と棚橋泰文元国家公安委員長の「国会議員関係政治団体」が2020~22年、支出の公開基準の緩い「その他の政治団体」である後援会組織に巨額の資金を移していたことが判明した。専門家からは「制度の抜け穴を利用した脱法的行為だ」との声が上がる。背景には、関係政治団体の定義が狭く届け出ないことが可能で、議員と政治団体の関係が外部から分かりづらいことがある。

茂木敏充後援会総連合会(上)と棚橋泰文後援会連合会の政治資金収支報告書。組織活動費では「その他の支出」に総額だけ記載されていた(画像の一部を加工しています)
茂木敏充後援会総連合会(上)と棚橋泰文後援会連合会の政治資金収支報告書。組織活動費では「その他の支出」に総額だけ記載されていた(画像の一部を加工しています)
2022年の棚橋泰文後援会連合会の政治資金収支報告書。組織活動費では「その他の支出」に500万円余りの総額だけ書かれ、明細は1件もなかった(画像の一部を加工しています)
2022年の棚橋泰文後援会連合会の政治資金収支報告書。組織活動費では「その他の支出」に500万円余りの総額だけ書かれ、明細は1件もなかった(画像の一部を加工しています)
茂木敏充後援会総連合会(上)と棚橋泰文後援会連合会の政治資金収支報告書。組織活動費では「その他の支出」に総額だけ記載されていた(画像の一部を加工しています)
2022年の棚橋泰文後援会連合会の政治資金収支報告書。組織活動費では「その他の支出」に500万円余りの総額だけ書かれ、明細は1件もなかった(画像の一部を加工しています)

 国会議員関係政治団体は政治資金規正法が定めており、事務所費の架空計上問題などを受け、政治資金の透明性を高めるため09年に運用開始。人件費を除く1万円超の支出を報告書に記載し、全ての領収書の保管義務もある。不十分との指摘はあるものの、税理士など「監査人」による監査も義務付けられている。
 茂木氏の後援会に寄付をした「茂木敏充政策研究会」、棚橋氏の後援会に寄付をした「自民党岐阜県第2選挙区支部」や「21世紀を拓く会」は国会議員関係政治団体に該当。22年の政治資金収支報告書では、茂木敏充政策研究会は支出の69・3%、21世紀を拓く会は95・9%について、支出先や1件ごとの金額、目的などの明細が明らかになっている。
 一方で両氏の後援会は国会議員関係政治団体ではなく「その他の政治団体」。規正法では、人件費や備品・消耗品費、事務所費などの経常経費は総額のみの記載で、政治活動費についても5万円以上の支出のみ記載義務がある。そのため、収支報告書によると、両氏の後援会では政治活動費も大半が「その他の支出」にまとめられ、支出先や目的などが分からない。監査もなく、公開性も低いため外部からチェックができず、ブラックボックス化している。
 収支報告書によると、自身の資金管理団体から、所在地や会計責任者が同じ後援会に対し、政治資金を移動させた国会議員は複数いたが、茂木氏、棚橋氏はとりわけ巨額だった。専門家からは「公然の抜け道だ」との苦言が上がる。
 総務省によると、国会議員関係政治団体として届け出るかどうかはあくまで団体側の判断で、届け出ないことへの罰則規定もない。関係政治団体の定義は、(1)国会議員が代表を務めるか、(2)所得税の寄付金控除の適用を受け、特定の国会議員を推薦・支持する団体。代表者を議員以外にし、寄付金控除の適用も受けなければ、国会議員の後援会でも届け出ずに済む。
 実際、茂木氏と棚橋氏の後援会組織は個人献金収入がなく、ほぼ全てが資金管理団体や政党支部からの寄付金。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「控除の適用を受ける意味のない団体なので、公開性が高くなることを避けるため、関係団体として届け出ていないのだろう。定義の悪用だ」と批判する。
 自民党の政治刷新本部は1月、派閥の在り方や政治資金の透明化を議論し、中間取りまとめを公表。ただ、三木氏は「団体名に議員の名前をつけなければ、そもそも議員に関連する団体を見つけ出すことすら困難だ。議員と政治団体をひも付ける基本的な部分での抜け穴が大きいにもかかわらず、改革議論の俎上に載っていない」と指摘した。

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