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【デジタル端末の履歴閲覧】「内心」のぞき見に警鐘 子ども守れるとの見方も

 学習用デジタル端末の活用が日常的になる中、教育委員会の判断次第で児童生徒の検索履歴を閲覧することも容易となっている。自殺関連の検索が判明した例があるなど、子どもを守るのに役立つとの見方もある。ただ、東京都世田谷区教委の活用方針にストップをかけた区議は「検索履歴は内心そのもの」だとして、のぞき見のような在り方に警鐘を鳴らす。

取材に応じる東京都世田谷区の上川あや区議=5日、世田谷区
取材に応じる東京都世田谷区の上川あや区議=5日、世田谷区
「アイ・フィルター」の履歴閲覧機能を紹介するパンフレット
「アイ・フィルター」の履歴閲覧機能を紹介するパンフレット
取材に応じる東京都世田谷区の上川あや区議=5日、世田谷区
「アイ・フィルター」の履歴閲覧機能を紹介するパンフレット

 政府の事業で全小中学生に端末が配られ、文部科学省は家庭学習での利用も推奨している。並行して、フィルタリングソフトの普及も進んだ。情報セキュリティー企業「デジタルアーツ」(東京)の調査によると、9割を超える市区町村教委が、他社製品も含めて同種ソフトを使っている。
 本来の用途は子どもが不適切なサイトに接続したり、授業に無関係の動画を見たりする行為を防ぐことだが、デジタルアーツは2022年、自社ソフト「アイ・フィルター」に検索履歴の閲覧機能を追加。担当者は、教育現場の要望を踏まえたとし「インターネットでの子どもの動向は見えにくい。学校側が知りたいと考えるのは自然なことではないか」と話す。
 同社ソフトの管理画面では、子どもの名前などを指定して、検索やサイトへの接続履歴を閲覧できる。設定により、教委だけでなく学校や教員に閲覧権限を持たせることが可能。さらに、自殺などをうかがわせる言葉が入力されると学校側に警告メールを送る機能も備わっている。
 このソフトを導入した東日本のある教育委員会は「必要に応じて履歴を閲覧することがある」との内容の同意書を保護者から取っている。担当者は「『気になる子どもがいる』と相談してきた教員と一緒に履歴を見て、その子が自殺に関連する言葉を検索していたと判明したことがある。リスク管理に役立つと感じた」と明かす。
 一方、世田谷区教委の活用に異論を唱えた上川あや区議は「検索履歴はその人の内心そのもの。のぞき見るのはあり得ない」と憤る。特に恐れるのは、性的少数者の子どもを追い詰めかねないことだ。性的指向や性自認を巡る悩みは周囲に打ち明けづらく、ネットで情報を得ようとすると指摘。学校側の履歴閲覧は、意図しなくても機微な情報に触れてしまうと懸念する。
 上川区議は「教委などで十分な話し合いがないまま、安易な利用が広まっていないか心配だ。大人たちは、自分自身の検索履歴を見られたらどう思うかを考えてほしい」と問いかけた。

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